太陽光発電所で“ヤギ”を飼うのは効果的? 農薬選びのポイントは――雑草対策Q&A基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(10)(1/3 ページ)

日本でも稼働から数年が経過する太陽光発電所が増える中、課題の1つとなっている雑草対策について解説する本連載。今回は特別編として読者の皆さまから寄せられた、雑草対策に関する質問・疑問についてお答えします。

» 2019年04月24日 07時00分 公開

 今回の連載では特別編として、読者の皆さまにご投稿いただいた、太陽光発電所の雑草対策に関する質問・疑問にお答えしたいと思います。

Q1.発電所の敷地内でヤギを飼育することは、雑草対策に有効か?

A:ヤギの飼育は有効とは思えません。その理由はいくつかあります。1つがヤギは雑草を全て食べるように思われていますが、好んで食べる植生(草種)と食べない植生があるため、せっかく敷地内で飼育しても、効果がない場合があるためです。

 また、ヤギは漢字で「山羊」と書くように、本来は山に生息している動物であり、人では登れない岩場でも登ることができます。このため、アレイにも簡単に登ることができ、飛び乗った際に太陽電池モジュール表面の強化ガラスを割る恐れがあります。太陽電池モジュール裏側のバックシートに傷をつけたり、セルを破損したりする恐れもあります。

 ご参考までに、ヤギではないですが鹿(シカ)が飛び乗って強化ガラスを割った写真をご案内します。分かりにくいですが割れたパネルの上に黄土色の足跡が残っています。鹿が侵入した理由は、フェンスの高さが低かったためです。

シカが飛び乗り、太陽光モジュール表面のガラスを割った例

 このように、ヤギを飼育するとなると、それに伴い水場などさまざまな設備や対策が必要になります。また、過去には発電所で飼育していたヤギが、食用目的に盗難されてしまった、逃走してしまったというケースも報告されています。こうした事態を防ぐためには、一定以上の高さの塀や柵などが必要になるため、コスト面でも一概に有利とは言い切れません。

Q2.防草シートや舗装などの雑草対策は、投資対効果が良くないと感じている

A:防草シートの導入に関するトラブルは、相談されることが多いケースの1つです。詳しくは本連載の第3回「費用をかけたのに効果なし、実は失敗が多い太陽光発電の雑草対策工法とは?」で解説していますので、ぜひご覧ください。なお、防草シートの場合、雨水処理を検討する必要があるので、全面敷き込みはおすすめできません。

Q3.いくつかの方法の比較検討した場合、低コストでベストな雑草対策は何か?

A:私の経験上、単純にコストだけを考慮すると除草剤(農薬)を使用する方が最も安くなります。ただし、使用場所や管理の面、さらに近隣との関係など、最も注意が必要な手法でもあります。

 ただ、発電所ごとに条件がちがうため、一概に「これの方法がベスト」とは言い切れません。総合的に判断する必要がありますので、ぜひプロにご相談ください。また、発電所ごとの最適な雑草対策の運用計画については本連載第4回の「雑草対策の失敗を防ぐ『太陽光発電所版IPM』とは何か?」をぜひ参考にしてみてください。

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