太陽光発電所で“ヤギ”を飼うのは効果的? 農薬選びのポイントは――雑草対策Q&A基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(10)(3/3 ページ)

» 2019年04月24日 07時00分 公開
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Q8.除草剤は顆粒(粒状)タイプと液状タイプを併用した方が効果は高いのでしょうか?

A:同じ場所、箇所で同時に使用する場合、効果はあるかと思いますが、経済性が悪くなり、費用対効果の面で考えるともったいないように思えます。ただし、土壌処理と茎葉処理の特徴を理解した上で、同じ発電所内でも場所、箇所によって使い分けることは有効だと考えています。

 例えばですが、作業・点検用通路、接続箱やパワコン、受変電設備周辺など雑草の植生を無くしたい場所は、裸地管理が適しています。よって粒状の、土壌処理型除草剤が有効だと考えられます。

Q9.除草剤散布により植物の根が無くなり、地盤が緩む事例がありましたか?

A:回答の前提として、まず発電所自体が正しい排水計画のもとで施工されており、適切に維持管理されている状態と仮定します。その上で除草剤の使用によって法面の土砂の流出してしまったという場合、その原因は植生もしくは土壌の問題に起因する場合と、その両方が重なった場合の3つに分類できます。発生率が高いのは両方が重なる複合要因の場合と思われます。

 除草剤が土砂の流出につながってしまう場合、その原因は「使用場所のミス(法面、傾斜地に使用)」「除草剤選択ミス(土壌処理型を使用)」「散布時期ミス(ゲリラ豪雨が発生しやすい時期)」の3つが考えられ、これらの重なりが多いほど、土砂流出の発生頻度が高くなる傾向にあります。


 いよいよ次回は連載の最終回となります。最後は弊社が実施した、実際に雑草によって事業に支障が出ていた太陽光発電所の改善事例を紹介します。草刈り作業と特殊な除草剤散布作業を組み合わせたケースで、併せて2018年に公開された太陽光発電事業の評価ガイドの対策、20年以上という長期わたって低コストかつ安心安全な管理を行うために実施したICTおよびクラウドサービスを活用した管理体制の構築などを紹介する予定です。

著者プロフィール

増田幹弘(マスダ ミキヒロ)
野原ホールディングス株式会社 経営企画部 再生エネルギープロジェクト室長
太陽光発電アドバイザー、緑の安全管理士、「東京都農薬指導管理士」

大阪出身、近畿大学卒業。1999年、私費にて参加したエコに関する研究会にて、電気を庭に取り付けた太陽光発電と自動車の大型バッテリーから、給湯は太陽熱を利用するなどの、今でいうゼロエネルギー住宅(奈良県)を視察し感銘を受ける。自宅をオール電化にし屋根には発電システムを取り付け、自宅エネルギー消費データを2年間記録、上記研究会にて発表。その後も省エネ、省資源についての研究を深め、建材の開発、リサイクルシステム、工場のエネルギー消費削減に大きく貢献。

2009年、野原産業(現 野原ホールディングス)に入社。2013年、事業開発部において八ヶ岳研修所の遊休地活用事業として太陽光発電プロジェクトを主幹。現在は、太陽光発電に関わる新事業として、第三者の視点からの太陽光発電設備の保守・点検(O&M)サービス「SUN SUN GUARD 20」を展開。豊富な知識と多様な事例、経験から、太陽光発電事業者向けセミナーにて講師も務める。≫


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