太陽光発電所での農薬利用、「法令違反」を避けるための注意点基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(8)(1/2 ページ)

日本でも稼働から数年が経過する太陽光発電所が増える中、課題の1つとなっている雑草対策について解説する本連載。今回は雑草対策に農薬を利用する場合に注意したいポイントについて解説する。

» 2019年02月14日 07時00分 公開

 前回の「雑草対策に使う前に、太陽光発電事業者が知っておきたい農薬の安全性」では、農薬の利用に深く関係する農薬取締法などの法令について、その歴史や背景を解説しました。今回はより実務に近寄り、太陽光発電の雑草対策に農薬を利用するメリットとデメリットと、そして複数の雑草対策工法との比較について解説したいと思います。

農薬のメリットと注意点

 農薬は農作物を作っている「農耕地」以外に、農作物を作らない「非農耕地」(道路、鉄道、宅地、公園、運動場、駐車場、堤とうなど)にも広く使われています。草刈りや防草シートなどの方法よりも、農薬が農耕地、非農耕地に使われている理由は、作業効率性や経済性に加え、安全性が高いからです。

 近年、人口減により一人当たりの作業効率を上げ、作業者への負担を減らし、作業がしやすい設備配置をしないと事業運営が行き詰まる恐れもでてきました。実際に、必要な通路幅が無く、作業性が悪いため、シルバー人材に太陽光発電所の草刈業務を断られてしまったという事例も耳にするようになっています。

 防草シートや草刈りは、劣化部の補修、事業終了後の撤去および廃棄費用などを考慮する必要あります。そのため、作業効率と経済性の面でも、農薬を適切かつ適時に利用するほうが優れていると考えます。

 しかし、農薬を使った雑草の防除は、「全ての場合において有効」とは言い切れません。あくまでも、農薬が有効でメリットがあるのは、「農薬取締法に基づいて使用する」場合です。農薬取締法を守った利用を行えば、それがそのまま発電事業における法令順守につながります。しかし、農薬の利用に関する近隣などとのトラブルの原因は、その多くが利用者側の問題となっています。

 事業者側がもし農薬を利用して事故(=法令違反)を引き起こしてしまった場合、近隣だけではなく、農林水産省、環境省、都道府県に説明し、対策案と管理体制などを提示する必要があります。よって大変な労力と時間を要することになります。

 使用者が法令違反を引き起こす理由の大半は、「表示ラベルを読まずに使用した」「表示ラベルの内容の意味を理解していない」などです。農薬には必ず、登録番号と注意事項がラベルに記載されています。農薬を使用する前に、必ずご確認いただきたいと思います。

農薬使用における使用者側の注意事項の一覧

 また、特に次表の「使用基準の順守」は重要です。農薬の利用に関するトラブル事例の多くはここに関係していますので、必ず発電所の管理項目に加えていただきたいと思います。

農薬には登録番号と注意事項が記載されているので、必ずチェックしたい

 次ページでは、農薬の利用に関する具体的な事故例について紹介します。

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