海流発電システム「かいりゅう」、実用化に向けた初の長期実証へ自然エネルギー

IHIが、NEDOプロジェクトで開発を進めていた海流発電システム「かいりゅう」。2019年秋から実用化に向けた初の長期実証実験がスタートする。

» 2019年07月26日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 海に囲まれた島国という日本の特性をエネルギー分野に生かすべく、海流を活用した発電システムの開発を目指すプロジェクトが進んでいる。IHIとNEDOが取り組んでいる事業で、2019年秋から鹿児島県十島村口之島沖において、開発した発電システムを用いた初めて長期実証実験がスタートする。

 開発しているのは一方向に流れ続ける水流を利用する海流発電装置。定格出力100kW(キロワット)、直径11メートルのタービンを2基備えており、海底に設置するシンカー(おもり)と特殊なロープで接続し、水中に浮遊させるように設置する。海面から30〜50メートルの深度に設置し、海流を利用して発電した電力は海底送電ケーブルを通して、陸上の受電設備に送電する仕組みだ。

海流発電装置「かいりゅう」

 発電装置全体の幅・全長はそれぞれ20メートル。海流速度が一定以上になった場合、タービンの角度を調整して回転数を落として発電機を守る仕組みになっている。左右2基の水中タービン水車はたがいに逆方向に回転する。これにより回転トルクを相殺し、海中で安定した姿勢を保持することで発電効率を高めるという。浮力を調整する機能も備えており、メンテナンスを行う際には海面に浮上する。

 IHIとNEDOはこのかいりゅうについて、既に2017年度に口之島沖で短期実証実験を行っている。この実証では、自律制御システムによって姿勢や深度を制御しながら、想定通りの性能を発揮することを確認できたという。さらに、海流特性や設置・撤去工事手法の精査などを含め、今後の実用化に向けて必要な実海域での試験データを取得した。さらに2018年度は長期の実証実験に向けて、発電性能などの確認に加え、環境影響評価などの情報を収集してた。

 2019年秋をめどにスタートする新たな実証では、これまでの成果を踏まえ、改良を行ったかいりゅうを利用する。具体的には、運転時にタービン翼や浮体の傾きを調整する自律制御プログラムを改良した他、海流の乱れ防止を目的とした整流板を増設し、排熱機能も高めた。併せて実証試験を行う鹿児島県十島村口之島沖の海流の計測、系統接続のための調査・検討や、地元との調整などにも取り組んだ。

 改良を施した実証機は2019年8月初旬に、IHIの横浜事業所から実証海域がある鹿児島県十島村口之島沖の実証海域に向けて出港する予定。同年8月中旬に口之島沖での設置工事を開始し、試運転などを行った上で、今秋からの運転開始を開始する計画だ。実証期間は1年以上を予定している。

 NEDOとIHIではかいりゅうの実用化を2020年度以降としているが、その実現に向け、初となる1年以上の長期実証の成果には大きな期待がかかる。

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