世界初のソーラーシェアリング国際学会、その中で見えてきた日本の課題とはソーラーシェアリング入門(17)(2/3 ページ)

» 2019年08月07日 07時00分 公開

各国のソーラーシェアリング事情

 ドイツからは、Fraunhofer ISEの営農型太陽光発電(Agrophotovoltaic, APV)の研究ユニットからチームリーダーの方が登壇し、主にドイツにおける営農型太陽光発電の技術開発状況や、各国での普及に関する統計データの報告がありました。営農型太陽光発電の原型と言える仕組みは1981年にドイツで発案されており、2010年代に入って日照量と作物の生育の相関を分析する仕組みが出来上がったことで、その後は実際の設備での実証が進められてきたとのこと。世界的に見ると、導入量は中国が1位であり、導入件数は日本が1位と推測されるそうです。取り組みの着眼点としては、やはり農業者が自ら事業に取り組むかどうかが重要である点を強調していました。

 中国からはGCL社が登壇し、同社の中国国内における営農型太陽光発電の導入実績を中心に報告がありました。中国では既に7GW(ギガワット)以上の営農型太陽光発電が導入されているとみられ、同社も多数のプラントを手掛けているほか、その設置形態も露地から施設栽培まで多様化しています。同社の技術的な強みとしては、営農型太陽光発電プラントを設備のユニット化により、5MW規模の設備を2週間以内に完工されられるということです。一方で、中国国内でも地域による導入への温度差はあり、必ずしも容易に営農型太陽光発電が広まったわけではないようです。

 韓国からは、2019年3月に開催された日韓営農型太陽光発電シンポジウムでの発表内容のアップデートや、全羅南道農業技術院による実証プラントでの試験結果について報告がありました。今年に入って、営農型太陽光発電の導入に必要な制度の準備が進んでいるとのことです。

 これらの報告に加えて、最終日にはエクスカーションとして全羅南道農業技術院の農場に建設された、営農型太陽光発電の農業実証プラントも視察しました。規模としては低圧100kWの設備が畑地に設置されており、架台は全面スチール、モジュールは4×9セルの36セル品が使われていて、PCSは韓国の主力メーカー品です。東西方向の一軸追尾式と、南向きの固定式が1つの敷地内に並んで設置されており、双方のシステム下での作物生育に関する研究が主たる目的ということです。

全羅南道農業技術院の営農型太陽光発電の実証試験プラント

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.