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» 2019年10月02日 07時00分 公開

太陽光:電力不要の「省エネ調光ガラス」実現へ、温度差で太陽光の透過量が変わる新材料

産総研らの研究グループが液晶と高分子の複合材料を開発。温度変化によって太陽光などの透過量を自動制御できる超高ガラスなどの製造が可能な材料で、電力を用いずに利用でき省エネな調光窓ガラスの実現などに寄与できる成果としている。

[スマートジャパン]

 産業技術総合研究所(産総研)は2019年10月、大阪有機化学工業と共同で、液晶と高分子の複合材料を開発したと発表した。温度変化によって太陽光などの透過量を自動制御できる超高ガラスなどの製造が可能な材料で、電力を用いずに利用できる省エネな窓ガラスの実現などに寄与できるとしている。

 今回、研究グループは、高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、2枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発。この調光ガラスは、液晶、モノマー(高分子の原料)、重合開始剤の混合原料を2枚のガラス基板の間に満たし、紫外光を照射して重合させている。

PNLCの調光原理。温度変化により低温では透明状態、高温では白濁状態に切り替わる。出典:産総研
PNLCを調光させた際の窓外景色の様子。低温での透明状態(左)と、高温での白濁状態(右)。 出典:産総研

 今回開発したPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造を持ち、温度によって透明になったり白濁になったりする特性を持ち、同時に全透過率が大きく変化する。低温では、液晶分子が配向し、液晶相と高分子相の屈折率が一致するので、PNLCは光学的に均一となり透明になる。一方、高温になると液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため、光散乱が生じて白濁する。この時、光の散乱方向を入射側に向けることができれば、その分だけ全透過率を下げることが可能になる。

 研究グループでは、光重合で形成されるPNLCの微細な構造を調査し、白濁状態では後方散乱が生じて、透明と白濁の切り替えによって、全透過率が大きく変化するPNLCの構造を発見した。今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示したという。この変化幅は、既に実用化されている液系の調光ガラスと同等レベルとしている。

 透明状態での直進透過率は、従来からある熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化が可能で、例えば、今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると、直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がったという。

図3 作製したPNLCの低温(透明状態)と高温(白濁状態)での分光透過率の例(a)全透過率、(b)直進透過率のスペクトル、(c)可視光の直進透過率の温度依存性。(a)中の灰色の塗りつぶしは太陽光強度の波長特性。(b)中の黒色の塗りつぶしは、視感度(人間の目における光の感じやすさ)の波長特性。(c)中の写真は、約25℃と50℃での試料外観 出典:産総研

 従来の液晶を用いた調光ガラスは、白濁現象を利用したプライバシーガラスとしての用途が主だったが、今回開発した全透過光量も制御可能な熱応答型のPNLCは、暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため、ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できる。また、作製工程や動作原理が単純であるため、製造・施工・運用の面でもメリットがあるとしている。さらに、固相の薄膜として扱うことができるため、既築の建物などに後付けで施工できるプラスチックフィルム基板への展開も可能であり、調光フィルムへの応用など、一層の普及が期待されるとした。

 研究グループは今後、実用化に向けて全透過率の変化幅の拡大と耐久性の向上に取り組む計画だ。また、今回実現したガラス基板を用いた調光ガラスは、新築建物などの窓ガラス施工が想定されるが、今後は窓ガラスへの後貼り施工ができるプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術開発に取り組むとしている。

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