「働こCAR」から得られるメリットを、具体的に見てみよう。まず、レンタカー契約を結ぶ地元企業にとっては、若者を採用する際の大きなアピールになる。福利厚生の一環としても魅力的であり、離職率の低下にも結びつくだろう。万一、社員が退職した場合でも、EVはレンタカー扱いなので、無駄なく日割りで返却できる。また、EV充電器を装備したソーラーカーポートが、無料で設置されるというのもうれしいところ。非常時の電源としても活用することができる。
新入社員にとって、月額1万9800円だけでクルマに乗り続けられるという金銭的メリットは大きい。EVだからガソリン代はかからないし、会社のソーラーカーポートに駐車しておけば、勤務中に充電しておいてもらえる。会社の通勤に使うことが必須条件だが、休日にプライベートで乗ってもOKだ。クルマでの移動が不可欠な地方都市の若者を、公私ともにサポートするものといえるだろう。
地域社会としては、若者の流出を抑え、地元就職を促すきっかけにしたいところ。若者が地元に根付けば、地域は活性化し、衰退をまぬがれる道も開けてくる。「若い人が楽しく生活し、働き、家庭を営むまちをつくるためには、住んでもらうことが大前提。現在の多治見市は、若い人が進学で一度出ていくと二度と帰ってこないまちになりつつある。多治見に住み続ける者として、何か行動を起こさなくてはと考え、このプロジェクトを立ち上げた」とエネファントの磯崎顕三代表取締役は話す。
多治見市役所も、バッテリーシェアリング「働こCAR」に期待し、バックアップしていく姿勢を示している。同プロジェクトは、多治見市主催の「2019ビジネスプラン コンテスト」で特別賞を受賞し、賞金100万円を与えられた。同市産業観光課の久田伸子課長代理は、「働き手を名古市など愛知県に取られてしまうのが課題。人口減少対策にもなると思うので協力していきたい」と語っている。
また、同市環境課の永井徹課長代理は、再生可能エネルギー普及の観点から「働こCAR」を高く評価。“環境と共生するまち”をうたう「多治見市環境基本計画」の理念に相応しいものとして、応援を約束する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.