FITの抜本改革で“低圧太陽光バブル”は終焉へ、入札制度は100kW以上に拡大太陽光(1/2 ページ)

「FIT制度の抜本的改革」に向けた議論が本格化。FIT開始以降、国内で急速に普及し、安全面での懸念も指摘されている野立て型の低圧太陽光発電は、2020年度からこれまでのような投資目的での新規開発は事実上難しくなりそうだ。

» 2019年11月12日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 「第5次エネルギー基本計画」に盛り込まれた「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)の抜本的改革」に向け、2019年夏から本格的な議論がスタートしている。同年10月から11月にかけて開かれた政府の委員会では、今後の太陽光発電の取り扱いに関する制度設計の方向性が示された。特に、FIT開始以降、国内で急速に広まった連係出力50kW(キロワット)未満の低圧事業用太陽光については大きく扱いが変わる見通しで、これまでのように投資目的での新規開発は事実上難しくなりそうだ。

 FITの抜本的見直に向けては、各種の再生可能エネルギー電源について、メガソーラーや風力発電などの大型の電源を「競争電源」に、小規模な地熱、小水力、バイオマス、低圧太陽光発電などを、地域で活用する「地域活用電源」に分類し、それぞれの枠組みに最適な制度を検討していく流れとなっている。具体的に、競争電源は買取価格の決定方法を入札制度に移行し、FITから自立した電源として市場競争を促すことで低コスト化を進める。一方の地域活用電源については、当面は現状のFIT制度の枠組みを適用する方針だ。ただし、FITを適用する案件については、新たな条件設定を設ける。

 2019年10月28日に開かれた再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会では、この地域活用電源の詳細な定義と、同電源として取り扱う(=FITが適用される)低圧事業用太陽光の基準についての方針が示された。2020年度から「自家消費型の地域活用要件」を設定し、これに該当する事業のみFITに基づく買い取りが適用される方針だ。

「自家消費型の地域活用要件」とは?

 委員会では、まず地域活用電源の定義を「自家消費型」と「地域消費型」に分類している。自家消費型とは、建物の屋根や敷地になどに発電設備を設置し、発電した電力をその場で消費するタイプ。なお、自営線で同一敷地外に供給する場合も自家消費型として認められる。一方の地域消費型は、災害時に地域住民に利用されることを前提とした上で、通常時は地域の需要家(地域新電力など)に対して売電(送電)を行うタイプだ。なお、どちらのタイプであっても地域活用電源として認められるには、「レジリエンスの強化に貢献すること」が必要としている。

 事務局案では、低圧規模の小規模な太陽光発電については、10〜50kWの出力規模で自家消費型であることを条件に地域活用電源と認定し、かつ住宅太陽光発電と同様に、自家消費しきれない余剰電力についてのみFITによる買い取りを行う方針が示された。これが上述した「自家消費型の地域活用要件」で、2020年度から設定される方針だ。つまり2020年度からは、自家消費を行わない50kW未満の低圧用事業用太陽光は、FITの対象外となり、相対契約によって売電を行うしかなくなる。

 なお、「自家消費型の地域活用要件」として認められるために必要な自家消費率の基準や、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)などの取り扱いについては、今後、調達価格等算定員会の場で議論される。

出典:再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会
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