安価・大容量な金属電池の実現に貢献、容量20%向上のマグネシウム合金を開発蓄電・発電機器

物質・材料研究機構(NIMS)が従来の材料よりも電気化学的活性に優れるマグネシウム合金材を開発し、マグネシウム金属電池の容量を約20%向上させることに成功。低コストかつ大容量なマグネシウム金属電池のさらなる性能への貢献が期待できるという。

» 2020年10月09日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2020年9月、従来の材料よりも電気化学的活性に優れるマグネシウム合金材を開発し、マグネシウム金属電池の容量を約20%向上させることに成功したと発表した。低コストかつ大容量なマグネシウム金属電池のさらなる性能への貢献が期待できるという。

 現状主流のリチウムイオン電池には、コバルトやリチウムなどレアメタルが利用されており、その大型化には高いコストが掛かる。そこで注目されているのがマグネシウム金属電池だ。マグネシウムは地殻埋蔵量がリチウムの1700倍以上であるため安価でありながら、多くの電気エネルギーを貯蔵できる特性を持つ。しかしマグネシウムは加工しにくい金属であることが影響し、マグネシウム金属を使った負極に対する研究はほとんど実施されていなかったという。

 そこで今回NIMSでは、マグネシウム電池電解質開発を専門とする研究者と、構造材料としてのマグネシウム合金の開発を専門とする研究者で共同研究を実施。電池特性を向上させるマグネシウム合金の探索を行った。その結果、結晶方位を制御し、20μm程度の微小な結晶粒で構成されたマグネシウム金属材に、原子濃度0.3%という極微量の異種金属を添加することで、電気化学的な活性を大きく高められることをつきとめた。

 例えば、カルシウムを添加した合金材(Mg-Ca)を負極に用いた電池を試作し、その特性を評価したところ、純マグネシウム金属を用いた電池と比較して、容量が約20%向上したという。これは、マグネシウム金属の合金化と組織制御で電池特性の改善を達成した世界初の成果としている。

開発したMg-Ca合金材の写真(左)と開発材の微細組織観察例(右) 出典:NIMS

 今後NIMSはこの成果をもとに、大容量マグネシウム金属電池の実現に向けて、金属組織構造の最適化に取り組むとしている。なお、今回の成果は英国王立化学会誌「Chemical Communications」にて現地時間2020年9月25日にオンライン公開された。

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