クリーンな「硫化スズ太陽電池」の実現へ前進、世界初の新材料を開発太陽光

東北大学、米・国立再生可能エネルギー研究所(NREL)、山梨大学らの研究グループは2021年3月、pnホモ接合の硫化スズ太陽電池を作製し、360mVという高い開放電圧の取り出しに成功したと発表した。持続可能な材料で構成する硫化スズ太陽電池の高効率化に寄与する成果だという。

» 2021年03月12日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 東北大学らの研究グループは2021年3月、pnホモ接合の硫化スズ太陽電池を作製し、360mVという高い開放電圧の取り出しに成功したと発表した。pnホモ接合の硫化スズ太陽電池の実現は、世界初の成果だという。

 硫化スズは、希少金属や有害元素を一切含まず、地球上に豊富に存在する安全な元素のみで構成される。そのため、クリーンな次世代太陽電池の材料として注目されている。

 硫化スズ太陽電池は、これまでp型の硫化スズとn型の異種材料を組み合わせたpnヘテロ接合タイプの試作改良が進められてきた。しかし、発電効率の低さが課題となっていた。同じ硫化スズで伝導特性の異なるp型とn型を組み合わせたpnホモ接合を用いれば発電効率の向上が見込めるが、その作製は難しく、これまでpnホモ接合太陽電池の成功例はなかったという。

 研究グループは2020年8月に、n型硫化スズ単結晶の大型化に成功。これにより、10mmを超えるn型単結晶を入手することが容易となった。今回、このn型硫化スズ単結晶の上にp型硫化スズをスパッタリング法により成膜し、pnホモ接合太陽電池を作製。成膜条件に改良を加えてない試作品において、360mVの高い開放電圧の取り出しに成功した。

pnホモ接合硫化スズ太陽電池の作製プロセスと発電特性

 試作品の変換効率は1.4%と既報のpnヘテロ接合太陽電池には届かなかったものの、大型のn型単結晶を用いることでさまざまな条件で多数のp型層の成膜が可能であり、pnホモ接合の最適化が加速できることから、今後高い変換効率の実現が期待されるとしている。

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