太陽光パネルの下では何が育つ? ソーラーシェアリングにおける農業生産の最新動向ソーラーシェアリング入門(47)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は筆者の実践をもとにした、最近のソーラーシェアリングにおける農業生産について解説します。

» 2021年06月21日 07時00分 公開

 日本国内でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の普及が本格化してから丸8年が過ぎましたが、その認知度はまだ十分とは言えません。2021年3月に私がプレゼンを行った経済産業省が主催する再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の場でも、「太陽光パネルの下で野菜が育つのか」や、「支柱があることで農作業に支障は無いのか」というところからたずねられる状況で、まだまだ理解が浸透していないのが現状です。

 本連載でもここしばらくは制度関連の話ばかりが続いたので、今回は最近のソーラーシェアリングにおける農業生産や出荷・販売の状況を前後編でご紹介します。

ソーラーシェアリング下での野菜栽培

 ソーラーシェアリングは水田や畑、牧草地から果樹園まであらゆる農地に導入が出来ること、適切な遮光率と架台設計によってあらゆる農作物が生産可能です。私が自社で保有・営農している千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機では、昨年から野菜の多品目栽培を進めています。遮光率が48%という環境下で、キャベツ・リーフレタス・サツマイモ・サトイモ・ジャガイモ・ナス・ショウガ・ニンニク・からし菜などを生産・出荷できるようになってきています。

ソーラーシェアリング下でのナス栽培の様子
ショウガ栽培の様子

 架台設計の段階で日射量の最大化を図る設計としていることもあり、それぞれの作物が十分な収穫量と品質を確保できています。太陽光パネルによる遮光によって地面が乾きにくくなるという影響もあって、通常は灌水(かんすい)が必要となる作物も雨水のみで育てられているなど、遮光環境を生かした生産方法を模索しています。

 ソーラーシェアリングでの農業というと設備下の全面で単一作物を栽培しているというイメージを持たれることが多いですが、畑を最大限に生かして生産量を確保し農業収益も上げていくために、少量多品種栽培の実施を図ってきました。3月末に農林水産省から出された営農型太陽光発電に関する新たな通知でも、一時転用許可の申請段階で複数の品種を選定しておけることが明示されましたから、こうした通常の露地栽培に近い生産を進めやすくなってきています。

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