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» 2021年08月26日 07時00分 公開

脱炭素化の切り札として注目の「仮想発電所(VPP)」――そのビジネスモデルを整理する連載「問われる“日本版VPP”の在り方」(1)(1/2 ページ)

再エネ普及や脱炭素化につながる事業モデルとして期待される「バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)」。中でも地域の脱炭素化に向け、“日本版VPP”の一つとして注目されるのが「地産地消型VPP事業」だ。本連載では「地産地消型VPP事業」について現状の課題とその未来像を解説。今回はまずVPPのグローバルにおける動向と、日本におけるVPPビジネスの現状を整理する。

[株式会社クニエ 谷津 綾乃,スマートジャパン]

 「バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)」は、2010年代初頭から欧米を中心にビジネスコンセプトが検討され始めた。これらの地域では既に電力を市場で売買するトレーディング機能が発達していたことから、VPPにおいても市場取引を前提とした収益モデルが構築されてきた。

 一方、日本では、再エネによる電力供給が長らく固定買取価格制度(FIT)を前提としており、市場取引による再エネ売買は、2022年開始のFIP(Feed in Premium)によって“制度上は可能になる”という段階である。実際にはまだ価格の実績・指標がないために、企業はSmall start/Quick Win事業として、市場取引を介さない非トレーディング型の「再エネコーポレートPPA(Power Purchase Agreement、電力販売契約)事業」や、特定の地域内で完結する「地産地消型のVPP事業」に取り組んでいる状況である。

 本連載では、日本で主流の「非トレーディング型VPP事業」であり、特に昨今地域レベルでの脱炭素が加速化する中で注目されている「地産地消型VPP事業」について、現状の整理並びにデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した未来像を論じる。

 初回となる今回は、VPP事業の整理として、VPPのグローバルにおける動向と日本におけるVPPビジネスの現状について解説する。

グローバルにおけるVPPの動向と日本の現状

 VPPは2010年前後から欧州を中心に実証事業がスタートしたが、商用化への大きな契機となったのは、2012年のドイツにおける再生可能エネルギー法改正である。それまでドイツの再エネ開発事業者は、現在の日本同様、FITの下で長期間の電力買い取りを保証されていた。しかし同改正により、再エネ電力の市場における販売が可能となった。

 また2014年には、100kW以上の再エネ電源は市場への直接販売が義務化されたため、FIT以外の売電方法に知見の無い再エネ開発事業者が、VPPアグリゲーターと呼ばれる仲介役を介して市場で電力を売電するビジネスモデルが増加し、これをビジネス機会と捉えたアグリゲーター企業が欧州でVPP事業を拡大していった。

 日本においても、2022年4月にFITからFIPに移行されることが決定している。FIPとは、再エネ発電事業者が電力市場で売電した場合に、一定のプレミアムを上乗せした売電収入が支払われる制度であり、再エネ発電事業者は需給バランスと市場価格の変動を意識しながら売電することで、より収益を拡大できる可能性がある。

 とはいえ、これまでFITに慣れている発電事業者にとって市場取引はなじみがないため、再エネ事業者の代理として再エネ電源を取りまとめ、市場取引を行うVPPアグリゲーターの存在感が高まると考えられる。特に目先では、50kW未満の低圧の太陽光発電事業が既にFIT対象外となっており(自家消費型の地域活用や営農型を除く)、またこれら小規模発電所の今後の開発ポテンシャルはメガソーラーよりも大きいことから、低圧太陽光におけるアグリゲーションニーズは既に顕在化している。

図1 再エネ収益モデルの変遷イメージ

 しかしながら、2022年時点では一旦、新規認定でFIPのみが認められる電源は1MW以上と、大規模電源がメインであるため、施行当初からFIPを活用する企業は限られると推測する。

 また、欧州ではVPPから発電された電力の販売先として、いわゆる系統安定のために公募で調整力を募るアンシラリーサービス市場も活用されている。日本においては需給調整市場と呼ばれるこの市場は既に2021年4月に開始したが、現在は応動時間(送配電事業者からリソース保有者に対して調整力提供を依頼してから、実際に電力が供給されるまでにかかる時間)が45分以内の三次調整力II(編注:実際は丸囲みの2)のみが対象で、より応動時間が短い一・二次調整力は2024年開始予定である。

 こうした需給調整市場に代表されるアンシラリーサービス市場においては、リソースの応動時間が高ければ高いほど、それに対する報酬も高いことが一般的である。特に蓄電池のような即応性の高い電源は一次調整力市場で高い収益を獲得していく傾向が見られていることから、蓄電池による調整力提供を前提としたVPPの市場取引本格化は、2024年以降になるのではないだろうか。

 しかし、今年初頭に起きた日本卸電力取引所(JEPX)の価格高騰で顕在化したように、日本では旧一般電気事業者による火力などの従来型電源による供給力が非常に大きな割合を占める。その供給力が滞れば市場価格のボラティリティが急激に高まる可能性があり、しばらくは市場取引に依存したビジネスモデルを検討する企業は多くないと推測している。

 次のページではこうした市場背景と現況を踏まえつつ、日本におけるVPPをビジネスモデル別に整理する。

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