リチウムイオン電池の充放電を4分の1以下に高速化、産総研らが材料開発に成功蓄電・発電機器

産業技術総合研究所が岡山大学らと共同で、リチウムイオン電池にチタン酸バリウム(BTO)から成るナノサイズの立方体結晶の誘電体を使用することで、充放電時間を従来と比較して4分の1に短縮することに成功。超高速な充放電を可能とする次世代電池の実現に貢献する成果だという。

» 2022年02月25日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 産業技術総合研究所(産総研)は2022年2月21日、岡山大学らと共同で、リチウムイオン電池にチタン酸バリウム(BTO)から成るナノサイズの立方体結晶(ナノキューブ)の誘電体を使用することで、充放電時間を従来と比較して4分の1に短縮することに成功したと発表した。超高速な充放電を可能とする次世代電池の実現に貢献する成果だという。

 一般にリチウムイオンは、電解液と電極の間を移動する際に生じる電気化学反応の抵抗が高いとされている。この移動抵抗を下げることができれば、電池の充放電時間を改善できる可能性がある。

 そこで産総研では、リチウムイオンを引き寄せる性質を持つ誘電体のBTOについて、ナノサイズで高い結晶性を持つ、単結晶立方体ブロックを水熱法で合成する手法を開発。さらに、正極活物質のコバルト酸リチウム(LCO)上に、ナノキューブを高分散に固定化することにも成功した。

開発したBTOナノキューブ 出典:産総研

 次に得られた材料でコインセル型のリチウムイオン電池を作成し、3分間の高速充放電試験を行った。その結果、LCO正極のみを使用した場合よりも、4.3倍の放電容量が得られ、充放電時間を4分の1以下とすることができたという。

 なお、岡山大学は、リチウムイオン電池の正極材料と電解液の間に誘電体のナノ粒子を導入することで、誘電体ナノ粒子の表面にリチウムイオンが選択的に吸着し、リチウムイオンの移動が加速されるという現象を発見。今回、これらの知見をもとに、リチウムイオン電池の充放電時間を短縮する技術を開発した。

 研究グループでは今後、ナノキューブの粒子サイズ制御ならびに固定化プロセスや被覆率の制御の最適化など、充放電の高速・大容量化に向けた取り組みを進め、次世代の高速・大容量電池への適用を目指すとしている。

 なお、今回の研究成果はドイツの科学誌「Advanced Materials Interfaces」に2021年12月13日にオンライン掲載された。

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