既設の太陽光発電も規制対象に! O&M視点で解説する山梨県新条例への対応ポイント対応期限の2022年6月30日が迫る!(1/3 ページ)

昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。今回は番外編として、山梨県で施行された太陽光発電に関する新条例について、O&Mの視点から詳しく解説します。

» 2022年06月06日 07時00分 公開

既存の太陽光発電も対象! 対応期限が迫る山梨県の新条例

 今回は本連載「法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント」の番外編となる緊急特集として、2021年10月1日から山梨県で施行された「山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例」で、発電事業者への対応が義務付けられた各種の対応について、特に維持管理(O&M)に絞って解説します。

山梨県の新条例のポスター 出典:山梨県

 本連載でも触れましたが、この新条例は全国でも珍しい、自治体が主導して太陽光発電の適切な導入と維持管理についての規範を定めた条例です。制定の背景には、度重なる地域住民とのトラブルがあります。

 また、今後新たに設置する発電所だけでなく、既存の発電施設についても対応が義務化されてるのが大きな特徴です。書面によって、発電事業の正しい運営・維持管理の状況を示すことが求められています。

 既設の出力10kW以上の地上設置型の太陽光発電所は、設置規制区域の内外にかかわらず、2022年6月30日まで(10kW未満は9月30日まで)に山梨県に「指定の資料」の提出・公表と、発電所への「山梨県対応の事業計画標識の設置」が義務付けられています。提出が義務付けられている資料は、電気事業法における保安規程の水準以上に詳細な内容を記入することが求められており、O&Mのプロでも対応に苦慮しそうな箇所が多数あります。

 本稿は、少しでもこの新条例への適切な対応に役立つ情報を提供したい――という動機から執筆しています。筆者自身、これまで新条例の施行に向けて開催された山梨県のオンライン説明会に参加し、質疑を行ってきました。そういった情報を本稿でみなさまにフィードバックしたいと考えています。

 また、この山梨県のこの動きは、今後、地域の住民・環境と良好な関係を望む他の都道府県にも十分影響(条例の策定など)すると考えられるため、筆者自身、大変注視しています。山梨県の新条例は、詳細で多くの報告書、届出書、チェックリストなど発電事業の運営として参照すべきことが多くありますので、山梨県以外で事業を手掛けている方でも、ぜひ参照されることを推奨します。

山梨県の新条例の目的とは?

 新条例が制定された目的は、太陽光発電事業と県内の自然環境や生活環境及び景観、そして県民の安全安心な生活の調和にあります。

 太陽光発電事業者は、これらを十分理解した上で、地域住民などから不適切な事業運営だと指摘されないように十分配慮し、事業運営すべきかと思います。山梨県では条例に関連して「山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持に関する条例手引書」を公開しています。この手引書では土砂災害等や周辺環境への配慮など、事業者としておさえておくべきポイントが記されているので、必ず目を通しておきたい内容となっています。

ほぼ全ての出力規模の太陽光発電が対象に

 新条例の対象となる発電設備と、具体的な対応しなくてはならない内容について、下記の表に簡潔にまとめました。

山梨県の新条例の概要

 最も注意すべき点は対象設備です。FIT法では20kW以上が対象となっていますが、山梨県の新条例では「10kW以上(屋根置きなどを除く)」と、対象となる発電所の範囲が広がっている点です。また、2022年4月1日以前に設置あるいは工事に着手していた場合、10kW未満の発電所も対象となります。

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