CO2回収・貯留事業の普及へ「CCS事業法」整備が具体化 制度設計の概要エネルギー管理(4/5 ページ)

» 2023年02月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

貯留事業者の賠償責任の考え方

 貯留事業権者のリスクとして、CO2の漏洩等に伴う第三者に対する賠償責任が存在する。

 民事上の賠償責任については原則、過失責任主義が適用されるものの、貯留事業は不確実性のある地下構造を利用するため、一定の場合については、被害者の救済とリスクの明確化の観点から、無過失責任を採用することとする。

 貯留事業者は貯留事業の保安に責任を有しているため、基本的に貯留事業者に責任を集中する形を取り、国にモニタリングの責任が移管された後には、国において賠償責任を負うこととする。

 なお貯留事業者に対しては、損害賠償の支払い原資の確保のため、保険加入もしくは供託を行うことを貯留事業実施の条件とする。

「貯留事業財団」の創設

 鉱業や工業等の分野では、資金調達の円滑化を図る仕組みとして、複数の資産を財団として一つの資産としてみなし、抵当権の対象とする財団抵当制度が活用されている。

 CO2貯留事業は大規模な投資を必要とする事業であるため、「貯留事業財団」を創設することにより、CCSの資金調達の円滑化を図る。貯留事業財団は貯留事業権や土地・工作物等から構成され、工場抵当法の工場財団に関する規定を準用して、一カ所の不動産と見なすこととする。

CO2の輸送事業

 CCSを目的としたCO2の輸送事業には、タンクローリーによる陸上輸送のほか、船舶、パイプラインによる輸送が想定される。

 CO2輸送事業では安全性確保等の観点から、技術基準への適合義務や自主的な保安、工事計画及び検査などの措置が求められる。

 なお今後、コンビナート等において多数の工場から排ガス(低濃度CO2)を回収・集約し、CO2分離回収を集中的に実施する事業形態が誕生すると予想されるが、この形態はCO2の「輸送事業」ではなく、「分離回収事業」の一環として捉えられる。

 CO2輸送事業は公共性や公平性が求められる事業であるが、CCS事業が黎明期であることに鑑み、過度な規制とせず事業参入を促す観点から、「届出制」を原則とする。

 ただしCO2をパイプラインで輸送する場合、ガス導管事業に近い特徴を持つと考えられる。同一地域内で複数の事業者によるパイプラインの二重投資等を避け、効率的なインフラ整備を進めるためには、事業規制を許可制または登録制とすることも一案である。

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