典型的には、CO2の排出者は、CO2分離回収事業を第三者に委託して行うことが想定されるが、CO2排出者が自ら分離回収事業を行うことも想定される。分離回収事業者は、CO2排出削減効果の帰属等を明確化するために、CO2排出者に対してCO2分離回収データを報告する必要がある。
このため、当該業務はCO2「測定業務」として位置付けられ、分離回収事業者および輸送事業のいずれもが、この測定業務を行う必要がある。
CO2分離回収事業についても安全性確保や大気への放散を抑制する等の観点から、技術基準への適合義務や自主的な保安、工事計画及び検査などの措置が求められる。また、CO2分離回収事業は比較的多様な参入が期待されることから、「届出制」を原則とする。
以上から、CCSバリューチェーンにおける事業規制は、図4が原則とされる。
なお参考までに、ガス事業法を例にした場合の事業規制は表2のとおりである。
CCS長期ロードマップでは、2050年時点で年間約1.2〜2.4億トンのCO2貯留を目安としているが、限られた期間内にCO2の貯留場を確保していく観点からは、国内だけなく海外の優良な貯留場の権益を確保することが検討されている。一方、国外の海底でCO2貯留するためにCO2を輸出する際には、ロンドン条約96年ロンドン議定書との整合性が課題となる。
第4回ロンドン議定書締約国会議(2009年)において、海底下地層への処分目的のCO2の例外的輸出を可能とするための議定書第6条の改正案が採択されたが、現時点では未発効である。
その後、2019年には議定書第6条改正の暫定的適用を可能とする決議が採択され、議定書第6条改正の暫定的適用に関する宣言をIMO事務局に寄託すると、海域でのCCSのためのCO2輸出が可能となった。CO2の輸出を行うためには、相手国との協定・取り決めの締結が必要となる。
日本がCCS目的でCO2を輸出するためには、まず96年議定書の批准を行い、暫定適用を行うとともに、国内法制度を整備する必要がある。また事業者がCO2を輸出する際には、国の許可が必要となる。
なお、ロンドン条約は海域に関するルールを定めているが、輸出先国における住民理解を得る観点から、海域だけでなく、陸域においても同様の措置を取ることとしている。
CCS事業法(仮称)は現時点、具体的な導入年は示されていないが、ロードマップ上では2023〜2024年度頃に法整備が予定されているように見える。同じくロードマップ上では試掘権の設定が2025年前後、貯留事業権の設定が2026年前後と図示されている。
事業者のFS開始や最終投資判断を妨げることの無きよう、法整備が進むことが期待される。
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