カーボンニュートラルに貢献する技術として、将来の普及が期待されているCO2回収・貯留(CCS)事業。2030年以降の本格普及に向けて、政府では同事業を対象とした具体的な法整備の検討を進めている。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、省エネや非化石電源等の導入を最大限としつつ、それでも排出されるCO2を除去するために、CCS(CO2回収・貯留)は重要な技術の一つと位置付けられている。
このため第6次エネルギー基本計画では、CCSの技術的確立・コスト低減、適地開発や事業化に向けた環境整備に関する長期のロードマップを策定することが掲げられており、資源エネルギー庁は「CCS長期ロードマップ検討会」を設置し、その検討を進めてきた。
CCS長期ロードマップでは、2050年時点で年間約1.2〜2.4億トンのCO2貯留を可能とすることを目安に、2030年以降に本格的にCCS事業を展開することを目標としている。
CCSの具体的な事業化にあたっては、CCS事業に関する国内法整備が必要不可欠である。このため、検討会では「CCS事業・国内法検討ワーキンググループ」を設置し、「CCS事業法(仮称)」のあり方について検討が進められてきた。
CCSは、CO2の排出から分離・回収、輸送、貯留といった複数の事業者を介することによって実現する事業である。ここではCO2の排出者は、CCS事業の利用者(ユーザー)であると位置づけられる。
従来、CCSを開始するにあたって法制度の観点から複数の課題があることが指摘されてきた。
まず、CCS事業に対する法令の適用関係(鉱業法・鉱山保安法等)がはっきりせず、事業者側で準拠すべきルールや国の監督の体制が不明確であった。またCCSは地域住民の理解を得ながら進める必要があるが、貯留事業者の保安責任やモニタリング責任が不明確であり、事業者が住民に説明すべき内容が明確ではなかった。
このため産業界からは、速やかにCCS事業に特化した新しい法律「CCS 事業法(仮称)」を創設することが強く要請されてきた。
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