CO2回収・貯留事業の普及へ「CCS事業法」整備が具体化 制度設計の概要エネルギー管理(3/5 ページ)

» 2023年02月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

貯留事業に関する保安リスクの検討

 CO2の地下貯留は、不確実性のある地下構造を活用する事業である。このため貯留事業では、地下と地上を通じて安全性を十分に確保しなければ、地域での理解を得ながら貯留場の開発を円滑化することはできず、また、働き手の確保にも支障が生じうる。

 CO2貯留事業では保安の確保が不可欠となることから、石油・天然ガス事業を参考として、以下の4つの点から、保安上のリスクを検討する。

  1. 人に対する危害の防止(対作業従事者、対第三者)
  2. CO2を貯留する貯留層の保護(対地下構造)
  3. 貯留事業所の施設の保全(対地上設備)
  4. 鉱害の防止(対第三者)

 例えば、気体としてのCO2は空気よりも重く目に見えないため、窒息のリスクを回避する必要がある。地下に貯留されたCO2については、貯留事業者がCO2の地下における広がりや漏洩等を継続的にモニタリングすることが求められる。

保安およびモニタリング責任等の有限化と国への移管

 CCS事業では通常、CO2排出者からCO2を回収・貯留する時点で、CCSの対価を受領することになると予想され、長期の貯留期間においては原則、収入は生じないと考えられる。このため、貯留期間中のコストが合理的な範囲内に収まることが、CCS事業を成立させる鍵となる。

 貯留期間中に発生する主なコストは保安コストやモニタリングコストであるため、保安やモニタリングの期間が永遠(無期限)となれば採算性の確保は不可能となる。

 このためCCSで先行する諸外国では、貯留事業の保安やモニタリング責任を、一定期間後に国に移管する制度を講じることにより、事業者の負担を一定の範囲内に抑制している。

表1.諸外国のモニタリング責任等の有限化の事例 出所:CCS事業・国内法検討WG

 今後日本でも同様の仕組みを導入する方向性として、その具体化を検討する予定である。

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