CO2回収・貯留事業の普及へ「CCS事業法」整備が具体化 制度設計の概要エネルギー管理(2/5 ページ)

» 2023年02月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

CO2そのものの位置付けと取り扱い

 CO2(炭酸ガス)そのものは、現在も溶接工程や炭酸飲料などに向け、一般的な産業ガスとして有価で売買されており、国内使用量は年間150万トンに上る。

 今後はメタネーションや合成燃料の原料とすることも期待されており、今後さらにCO2への需要が増大する可能性もある。

 またIEA(国際エネルギー機関)では、「1.CO2を危険物や廃棄物として扱うことにより CCS上の流通に阻害が起こらないように整理すること」や、「2.CO2の所有者を明確化する必要があること」の2点が示されている。

 このためCCS事業・国内法検討WGでは、CO2を廃棄物として取り扱うことはせず、有価物として捉えることが適切であり、CCSバリューチェーン上で管理可能な状態にあれば、当該CO2は排出者に「所有権」がある、と整理している。

 なお地下貯留された後のCO2は、管理可能性の観点を踏まえ、排出者は所有権を放棄するものとして扱うこととする。

CO2「貯留事業権」の創設

 CCS事業においては、CO2を地下貯留するための貯留場を安定的に整備し、CO2が安定的・効率的に貯留される状況を確保することが重要である。CO2貯留事業は、技術的に石油・天然ガス事業と共通する点が多いため、鉱山法制を参考とした、保安体制の整備や賠償責任の明確化が検討されてきた。

 まずCCSとしてCO2を地下に貯留することを、行政による許認可ではなく、一つの権利として新たに設定することとした。これが「貯留事業権」である。貯留事業権は、CO2が貯留可能かどうか調査を行う権利「試掘権」と、事業としてCO2を貯留する権利「貯留権」から構成される。

 貯留事業権を得た事業者は、一定の区域(貯留区)について、CO2の貯留が可能となる地下構造(貯留層)を独占排他的に使用することが可能となる。

 なお貯留場の適切かつ円滑な開発を確保する観点から、探査を許可性とするとともに、貯留事業権の申請については先願制ではなく、探査結果等を踏まえた事業者の提案等を契機として、国が適地と認められる区域を指定し、適切な事業者を選定して権利を設定する制度とする。

図3.「貯留事業権」設定の許可フロー 出所:CCS事業・国内法検討WG

 CO2貯留事業権の許可に際しては、鉱業法・鉱業権の規定を参考として、CO2貯留事業場を合理的に開発し、運営することを適確に遂行するに足りる経理的基礎および技術的基礎があること等が要件とされる。

 また長期間にわたる事業の安定操業と資金調達の円滑化の観点から、貯留事業権を「物権」としてみなすことが提言されている。(※物権とは、所有権などのように、物を直接に支配する権利)

 貯留事業権を物権として捉える場合、担保設定が容易になることや当初事業者が倒産した場合に他社に承継させ事業継続を可能とすることにより、ファイナンスの円滑化に貢献するという金融機関の意見もある。

 なお貯留事業権は、国による監督のもとさまざまな公法上の義務が課されることから、純然たる私権ではなく、公権的性質を有する権利(みなし物権)として観念することが提言されている。「みなし物権」にはすでに鉱業法による鉱業権や、漁業法による漁業権等がある。

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