脱炭素の切り札「カーボンリサイクル」、米中の先進事例に見る大規模化への展望欧米先進事例から考える日本のカーボンリサイクルの展望(2)(1/4 ページ)

カーボンニュートラルの実現に寄与する次世代技術として注目されている「カーボンリサイクル」。本連載ではこのカーボンリサイクルについて、欧米の先進事例を紹介しながら、日本の現状と今後の課題について解説する。第2回の今回はカーボンリサイクルを実現する重要技術と海外の先進事例について紹介する。

» 2023年02月20日 07時00分 公開
[株式会社クニエスマートジャパン]

 前回は脱炭素社会の実現において、カーボンリサイクルが担う重要な役割と日本にとってのインパクトを説明した。今回はカーボンリサイクルの実現を支える重要技術と、海外の先進事例を紹介する。

CCUSとカーボンリサイクル技術

 パリ協定で採択された気候変動目標(地球温度の上昇を1.5度までに抑える)の達成に向け、グローバル各国がカーボンニュートラルに取り組んでいる。目標の達成がかなり難しいとされるなか、カーボンリサイクルを含むCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術は、グローバル全体でのCO2排出量低減の20%程度に貢献できるといわれている。よってこれらの技術を幅広く利活用することは、パリ協定の目標達成における絶対条件ともいえる。

 CCUSのサプライチェーン(図1)は4つの重要部分で構成される。「❶大気や工業排気からCO2を分離・収集する部分」「❷運びやすい形にして活用する現場に輸送する部分」「❸回収したCO2を再利用して製品づくりに活用する部分」「❹地下に貯蔵する部分」だ。前回紹介したように、カーボンリサイクルはCCUS全体におけるCO2再利用の部分にあたる。

図1 CCUSのサプライチェーン 出典:経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ 令和元年6月(令和3年7月改訂)」をもとにクニエ作成

低コスト化と大規模導入を実現する技術・モデル

 カーボンリサイクルが、脱炭素化全体により大きなインパクトを与えるためには、カーボンリサイクルの低コスト化と大規模導入の実現が前提条件になっている。そのため、この2つの条件をクリアできるようなイノベーティブな技術・モデルの実現が、われわれにとって重要性と緊急性が高い。よって、ここからはそれぞれの実現に向けた取り組みについてみていく。

低コスト化の実現

 カーボンリサイクル利活用におけるトータルコストは、主に(図2、横軸は❶〜❸、縦軸はコスト構成、主要技術、主要プレイヤー)「❶CO2分離・回収コスト」「❷回収したCO2の輸送コスト」「❸CO2の再利用・製品化コスト」の3つで構成される。さらにこの3つコストの比重を見ると、❶と❷の部分は全体コストの大半を占めるといわれている。つまり❶と❷のコスト低減に貢献するイノベーティブな技術開発が最も重要であり、各国・企業の取り組みも活発となっている。そのため、ここでは❶と❷にフォーカスし、米中の取り組みをみていく。

図2 カーボンリサイクル利活用のコスト構成 出典:みずほ情報総研レポートvol.20 2020「CO2有効利用(CCU)の国内外の動向」をもとにクニエ作成
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