脱炭素の切り札「カーボンリサイクル」、米中の先進事例に見る大規模化への展望欧米先進事例から考える日本のカーボンリサイクルの展望(2)(2/4 ページ)

» 2023年02月20日 07時00分 公開
[株式会社クニエスマートジャパン]

米中におけるカーボンリサイクル技術の動向

 ❶のCO2分離・回収コストの高低は、排出されたCO2の濃度によって異なる。図3で示すように回収するCO2の濃度と分離・回収にかかるコストは反比例の関係で、低い濃度のCO2を分離させるためには高いエネルギー消費量が必要となり、コストが高くなる。そしてCO2回収時に活用する技術によっては、回収設備に対する腐食も発生するため、設備投資コストも上昇するケースが多い。

図3  CO2分離・回収コストの比較(CO2濃度別) 出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「CO2分離・回収技術の概要 2020年度成果報告会」をもとにクニエ作成

 ❶CO2分離・回収コスト削減の方向性として、技術主導による産業化促進と、規模型主導による主要産業でのCO2回収能力の最大化という2つがある。

 技術主導の代表的な海外事例は、米国石油大手であるシュルンベルジェと米国研究機関のRTIインターナショナルのCO2回収技術の産業化促進の共同開発である。シュルンベルジェが本社をおくテキサス州は、全米第1位のCO2排出量があり、ガス輸送パイプラインも非常に発達している。

 RTIインターナショナルは米国の国立エネルギー技術研究所(NETL)が資金支援する非営利の研究機関で、非水溶媒(Non-aqueous Solvent,NAS)を用いたCO2回収技術を研究しており、2021年からノルウェーでエンジニアリング規模の試験を実施している。NAS技術の特徴は、高いエネルギー効率で99%を超えるCO2回収能力を実現し、設備に対する腐食性も低いため、設備投資コストも抑えられることだ。排ガスに対するCO2回収の高効率性(99%以上)、そして全体運営コスト(CAPEX,資本的支出)の設備投資とOPEX(事業運営費のエネルギー消費)を大幅削減と、経済性も優れていることから、大いに期待されている。

 特にCO2回収時に使われるエネルギー消費量は従来比で40%少なく、運営コストの面において、石油・化学や鉄鋼など幅広い産業への利活用が実現可能なレベルになりつつある。

 マーケットインに関しても、企業はCO2回収における一連の設備・インフラ投資が発生するため、幅広い業界・企業に適応する導入プロセスの設計、事業スキームとモデル構築を迅速に進め、市場拡大を目指している。

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