今後の太陽光・風力の出力制御はどの程度か? 長期見通しと低減策の試算結果エネルギー管理(1/5 ページ)

再生可能エネルギーの大量投入に伴い、近年多くのエリアで実施されるケースが増えている「出力制御」。発電事業の運営にとって非常に重要な出力制御の今後の見通しが公開された。

» 2023年03月22日 11時30分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 FIT制度開始以降、再エネ電源の大量導入が進んだことにより、軽負荷時には再エネ電源の出力制御が必要とされており、2022年度には表1の6つのエリアで出力制御が実施された。

 再エネ発電事業者にとって、将来的にどの程度の出力制御が発生する見込みであるのかという情報は、投資判断にあたって非常に重要な情報となる。

表1.再エネ出力制御の実績(2022年度) 出所:系統WG

 このため、資源エネルギー庁の系統ワーキンググループ(WG)では、これまでも再エネ出力制御の長期見通しとして、一般送配電事業者よる試算結果を公表してきた。なお、出力制御の文脈では「再エネ」とは、太陽光と風力発電を意味することに留意願いたい。

 第45回系統WGにおいて、2031年度時点の再エネ導入量を想定した出力制御の試算結果が公表された。一定の前提条件に基づく試算であるが、北海道や東北エリアでは、50%を超える非常に高い出力制御率が見込まれている。

 同時に、一定の対策を講じる場合には、これらの出力制御率を低減することが可能との試算も示されている。以下、具体的な試算の内容を見てみよう。

表2.2031年度時点の再エネ出力制御率(%) 出所:系統WG

出力制御見通し算定のフロー

 再エネ電源の出力制御見通しは、優先給電ルールに基づき、火力電源を停止または抑制したうえで、揚水発電所や地域間連系線の空容量を最大限活用することを前提に、以下のフローで算定している。

 ステップ1では、1年間(8,760時間)を通じた各時間を検討の対象とする。またステップ2において、各エリアの需要実績(直近の2019〜2021年度)を使用する。

 なお、住宅用太陽光発電の設置により、家庭での電力需要が小さく表れるため、太陽光の自家消費分電力を加算することにより、エリア需要想定を補正している。

図1.出力制御見通し算定のフロー 出所:系統WG

 各エリアの一般送配電事業者は、原則同じ方法で再エネ出力制御の見通しを算定しているが、本稿では代表例として、主に東北エリア(東北電力ネットワーク)の算定を報告する。

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