容量市場の開始以降で初、2024年度に追加オークション(25年度需給分)を開催へ第54回「容量市場の在り方等に関する検討会」(3/4 ページ)

» 2024年04月05日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

指標価格Net CONEの算定

 容量市場オークションの需要曲線を作成するためには、指標価格の設定が必要となる。現在、指標価格は、新規電源の建設及び維持・運営のための総コストをコスト評価期間で均等化したコスト(Gross CONE)から、他市場収益を差し引いた正味費⽤(Net CONE)として算定されている。

 最新の諸元をもとに算定すると、2024年度追加オークションのGross CONEは15,171円/kW、他市場収益は5,158円/kWとなり、Net CONEは10,013円/kW となった。これは、2021年度メインオークションで算定されたNet CONE(9,372円/kW)と比較すると641円/kW(6.8%)の上昇となっている。また、需要曲線における上限価格はNet CONEの1.5倍と機械的に設定されるため、15,019.5円/kWとなった。

表5.2024年度追加オークションのNet CONE算定諸元 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

 以上より、Net CONE:10,013円/kW、目標調達量:1億8,399万kW等の数値を基に作成された需要曲線の原案が図3である。

図3.2024年度(実需給2025年度)追加オークションの需要曲線の原案 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

供給力確保量の変動確認

 追加オークションの開催判断にあたっては、2021年度メインオークションで一旦確保した契約容量等が、その後どのように増減しているか、最新の状況を確認することが必要となる。

 供給力の減少要因の一つが、容量市場からの退出である。2021年度メインオークション(対象実需給年度:2025年度)で落札し、一旦、容量確保契約を締結した電源の1億6,534万kW(165,342,148kW)のうち、安定電源や変動電源の市場退出量は、約343万kWである。このうち、ブラックスタート機能(BS機能)公募の契約電源(揚水発電等)は、容量市場の契約容量と重複する部分について、容量市場から部分退出することと整理されたことにより、約134万kWが退出している。

 なお、ブラックスタート電源が部分退出した容量の一部(約66万kW)については、需給逼迫の際には容量市場外の供給力として活用することとしている。

表6.市場退出の見込み容量(対象実需給年度:2025年度分) 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

 発動指令電源の市場退出量179万kWのうち、電源等リストの未提出分が27万kW、実効性テストの未達成容量が152万kWであった。

 他方、実効性テストによりメインオークションの契約容量を超える供給力として確認された容量は、メインオークションの契約あり分(48万kW)と、実効性テストのみ参加の契約なし分(43万kW)を合わせて91万kWであった。この部分については、実需給期間に確実に供給力を提供するために現在の契約のリソースとして活用するか、追加オークションが開催された場合に参加するかは事業者の判断となるが、もし追加オークションへ参加して約定した場合には追加的な供給力となる。

表7.発動指令電源の実効性テストの反映状況(対象実需給年度:2025年度分) 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

 なお、発動指令電源は、メインオークション約定量からの市場退出率が約38%とかなり高い数値となっている。この理由の一つとして、発動指令電源はメインオークションにおいて調達上限(2021年度オークションでは全国H3需要の3%)が設けられていることが指摘されている。調達上限があるため、確実に落札するために、応札価格を0円/kWとする事業者が大半であり、シングルプライス方式で決まる約定価格の決定後に、自社のDR発動コストがこれを上回る場合、十分なDRリソースを確保できないため、自ずと市場退出率が高くなると考えられる。

 そのほか表8のように、③FIT電源等の期待容量の増加、④容量市場外の見込み供給力、⑤石炭とバイオマスの混焼を行うFIT電源の供給力を足し上げると、現時点確保されている2025年度供給力は1億8,418万kWとなった。これは、2021年メインオークション時点の供給力と比べ5万kWの減少である。

表8.現時点確保されている2025年度供給力 出典:容量市場の在り方等に関する検討会

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