IPCC AR6 のシナリオによると、2050年前後における日本の残余排出量は、年間約0.5〜2.4億トンと推定されており、カーボンニュートラル達成には年間数億トンのCDRが必要になると考えられる。
またIEAによると、2050年ネットゼロの達成には世界全体で2030年には9千万トン/年、2050年には9.8億トン/年のDACによるCO2回収が必要(貯留、利用の両方を含む)と推計されており、2030年に約400億$/年、2050年に約1,200億$/年のDAC投資が見込まれている。
現在のDACCSコストは、適用技術や実施条件により$400〜1,000/tCO2程度であるが、将来、100万トン/年規模達成時点で$150〜600程度、2050年には$100前後が今後のコスト目標・見通しとして示されている例が多い。
既存のDAC技術はCO2回収プロセスにおいて多量のエネルギーを必要とするため、DACCSは再エネ電源が豊富・安価であり、かつCCS制度・インフラが整っている海外諸国(北米や北欧、豪州等)で大規模な実証・商用化が進んでいる。Climeworks社はアイスランドにおいて年間3.6万トンのDACCSプラント(現時点の世界最大規模)を稼働中であり、2030年までに100万トン、2050年までに10億トン級のハブ建設を目指している。またCarbon Engineering社は、2025年中旬に年間50万トン級のDACCSプロジェクトを米国テキサス州において商業運転開始予定としている。
一方、国内でのCCS事業化は2030年以降と見込まれているほか、再エネ電源も限定的であるため、現時点では国内でDACCSを実証・商用化できる状況になく、ベンチスケール実証に留まっている。
これらの状況を踏まえ、技術と実施場所の観点からDACの社会実装を類型化したものが図4である。DAC産業全体を見ると、DACCS/DACCUそれ自体を行う事業主体のほかに、触媒等の部素材やプラント設計・建設、認証といった事業を支える多数のプレイヤーが存在する。特に部素材において高い技術を有する企業が国内には多く、こうしたサプライチェーンの一部から、国内企業によるDAC事業への参画が始まると考えられる。
一方、操業(オペレーション)や貯留・利用まで含めてDAC事業に参画しなければ、産業としての成長や日本のカーボンニュートラル達成への貢献を大きくは見込めないため、操業への参画まで含めたDAC産業全体を自国で育成・確保する観点も重要である。
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