次期エネルギー基本計画でも注目の論点に 原子力発電所の新設コストの検証がスタート2024年第3回「発電コスト検証WG」(1/3 ページ)

次期エネルギー基本計画の策定に向けて、各種電源の将来のコストを検証を目的に設置された「発電コスト検証ワーキンググループ」。今回は直近の会合で行われた、2040年を想定した原子力発電所の新設コストの検証状況をお伝えする。

» 2024年10月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 東京電力の福島第一原子力発電所事故以降、国内の原子力発電は24基が廃炉となる一方、12基が再稼働し、10月下旬には東北電力女川原子力発電所2号機が、東日本で初となる再稼働を予定している。また、容量市場の2023年度長期脱炭素電源オークションで落札した中国電力の島根原子力発電所3号機(新設)は、2030年度までの稼働を目指している。

図1.国内原子力発電所の現状 出典:原子力小委員会

 現在、国の「基本政策分科会」では次期エネルギー基本計画策定に向けて、原子力発電の利用の在り方や、脱炭素電源投資を促す市場環境整備について検討を行っているところである。同分科会の下に設置された「発電コスト検証ワーキンググループ」(WG)では、「モデルプラント方式」により、新設電源(2040年度)の発電コスト検証を行っている。なお同WGでは、新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWh当たりのコスト(LCOE)を試算しており、既存の発電設備を運転するコストを評価するわけではないことに留意願いたい。

原子力発電コストの内訳、モデルプラントの考え方

 原子力の発電コストは非常に幅広い費用項目から構成されており、それを再確認するため、2021年発電コスト検証における一つの試算結果をここで掲載する。図2のように、発電に直接関係するコストだけでなく、廃炉費用や核燃料サイクル費用(放射性廃棄物最終処分含む)など将来発生するコストのほか、事故リスク対応費用(損害賠償、除染を含む)や政策経費(電源立地交付金や研究開発等)などの社会的費用が織り込まれている。

図2.原子力の発電コスト(2021年コスト検証時) 出典:発電コスト検証WG

 今回のコスト検証では、2021年検証と同様に、直近に運開した4基(東北電力東通1号機、中部電力浜岡5号機、北陸電力志賀2号機、北海道電力泊3号機)の出力平均値120万kWを、モデルプラントの設備容量として設定する。

 設備利用率については、再稼働済み12基平均では79%(司法判断による運転差し止め分を除く)であることなどを踏まえ、60%、70%、80%(70%をベースケース)の3ケースを設定し、それぞれのコストを検証する。

 運転年数については、GX脱炭素電源法の成立により、「運転期間延長認可制度」が2025年6月に施行予定であるものの、最長で60年という枠組みは維持しているため、従来のコスト検証と同じく、40年と60年の2ケースを設定し、それぞれのコストを検証する。

 なお従来のコスト試算において、資本費のうち「廃止措置費用」については、サンプルプラントの解体引当金の届出費用を用いていたが、2024年度から廃炉拠出金制度が開始されたことに伴い、今回、算出方法を変更する。具体的な廃炉拠出金は、使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)が決定し、各原子力事業者へ通知する。

図3.廃炉拠出金制度のイメージ 出典:発電コスト検証WG
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR