電力系統の安定性を測る指標となっている「広域予備率」だが、実態とのかい離が懸念されており、必要な供給力を提供する事業者や需要家の混乱を招いている。そこで電力広域機関ではその算定方法の見直しや、予備率の低下時における供給力追加策を検討中だ。
現在、小売電気事業者(小売BG)や発電事業者(発電BG)は、計画値同時同量のもとでインバランスを回避するという市場メカニズムを基本としつつ、一般送配電事業者は供給力・調整力を確保することにより、電力の需給バランスを維持している。
2024年度から、電力需要に対する供給力の余裕を示す「広域予備率」をシグナルとして、各事業者に適正な供給力の供出・調達を促す仕組みとしているが、肝心の「広域予備率」が必ずしも実態を表した数値となっておらず、事業者や需要家の混乱を招いている。
このため、電力広域機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、広域予備率の算定方法の見直しや、予備率低下時における供給力追加策の適正化について、検討を行っている。
広域予備率の低下時には、安定供給確保のため、一般送配電事業者(TSO)は様々な供給力確保策を実施するが、その発動基準や容量市場落札電源のリクワイアメントであるか否かにより、分類したものが表1である。ここでは、広域予備率3%未満時の対策は省略している。
表1では、火力発電の「増出力運転(過負荷運転)」や「ピークモード運転」を「オーバーパワー運転等」と総称しており、いずれも設備に過大な負荷を与えるものであるため、発動には一定の制約を考慮すべき対策とされている。
なお、「発動指令電源の発動」は契約上の上限が年間12回であるにも関わらず、すでに上限に達するエリアもあるため、この判断基準は、広域予備率「8%未満」から「5%未満」に変更済みである。
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