他の再エネ電源より初期投資額や事業規模が大きい洋上風力発電。インフレなどの市場環境変化の影響を受けやすく、事業撤退などのリスクが懸念されている。こうした状況を踏まえ、国は価格調整スキームの導入や供給価格の評価方法の変更など、入札制度に関連する制度を見直す方針だ。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、洋上風力発電はその中核を担うと期待されており、再エネ海域利用法の公募選定等により、これまでに5.1GWの案件が形成されてきた。
他方、洋上風力発電は初期投資が数千億円規模、運転維持費も年間で数十億円規模となるなど、他の再エネ電源と比べて事業規模が非常に大きい点が特徴であり、総事業期間も約40年間と長期間であるため、収入・費用の変動リスクが大きい。実際に海外では、コロナ禍やウクライナ戦争を受けたサプライチェーンの混乱、インフレによる開発費用の増大等により、大規模な洋上風力プロジェクトからの撤退事例が複数生じている。
こうした世界的な情勢変化の中でも、洋上風力発電への電源投資を確実に完遂させるため、国は、価格調整スキームの導入や供給価格評価方法の見直しなど、再エネ海域利用法の公募選定方法を見直すこととした。
再エネ海域利用法による公募選定では、その第2ラウンドから、2030年エネルギーミックス等の政策目標に資する計画を高く評価するため、迅速性評価を採用している。これまでの迅速性評価において「想定される最速の運転開始時期」とは、各海域港湾の利用可能期間を踏まえて設定してきたが、今後の評価制度における「最速の運転開始時期」は、港湾の利用期間に依存せず、各海域統一の考え方を設定することとした。
具体的には図1のように、まず通常要する期間(基準日)を「6年」とする。これは、第2ラウンド公募全参加者の運転開始平均期間(6年1カ月)や、海外における直近の運転開始期間が約6年であることを根拠としている。
この「6年」から更なる事業者の創意工夫(6ヶ月)を考慮した期間である「5年6ヶ月」より早いものを「満点(20点)」として、ここから段階的に6カ月ごとに「2点」減点していく。この新しい階段形状では、10年目を終点(0点)としているが、運転開始まで10年以上掛かることが自明である場合などは、迅速性評価の考え方を必要に応じて見直す予定である。
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