運輸部門の脱炭素化への貢献が期待されている「合成燃料(e-fuel)」。その普及促進に向けた施策を検討する「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」の第3回会合では、国内外における合成燃料の技術開発の状況や、環境価値認証制度等の検討状況が報告された。
合成燃料(e-fuel)とは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を合成して製造される液体燃料であり、運輸部門における脱炭素化に重要な役割を果たすと期待されている。第7次エネルギー基本計画案では、商用車(8トン以下の小型車)の新車販売については、2040年までに電動車と合成燃料等の脱炭素燃料車で100%とすることを目指している。
合成燃料は高いエネルギー密度を有しており、常温で液体であるため取り扱いしやすく、燃料性状も従来燃料に近いため、既存の内燃機関や燃料インフラ(タンクローリー・ガソリンスタンド等)を活用できることがメリットとされている。他方、現時点、製造コストが高いことや、環境価値の取扱いが未整理であることなどが課題となっている。
2023年6月に策定された「合成燃料(e-fuel)の商用化に向けたロードマップ」では、2025年に合成燃料の製造を開始し、2030年代前半までの商用化を目標としている。
「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」の第3回会合では、国内外における合成燃料の技術開発の状況や、環境価値認証制度等の検討状況が報告された。なお、第7次エネルギー基本計画等において、合成燃料だけでなくバイオ燃料も含めた幅広い脱炭素燃料の導入やサプライチェーンの構築が求められていることから、今後協議会は「次世代燃料の導入促進に向けた官民協議会」へと名称変更を予定している。
合成燃料の製造に用いられるプロセスとしては、「FT(フィッシャー・トロプシュ)合成」や「メタノール合成」が主なものとされ、FT合成はディーゼルやSAF等の相対的に重質な燃料製品の製造を得意とし、メタノール合成はメタノールやガソリン等の軽質な燃料製品の製造を得意とする特徴を持つ。
世界各国で、次世代FT合成プロセスなど、合成燃料製造の高効率化・低コスト化に向けた技術開発が進められている。
欧米では、120件程度の合成燃料製造プロジェクトが進められており、すでに米国HIF Global社チリ工場(2022年稼働・メタノール合成)等の複数のプラントから製品が供給されている。なお、出光興産とJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)は、2024年8月に、HIF Global社に対して、合計225億円の共同出資を決定している。
国内ではENEOS社が、原料から一貫製造可能な合成燃料製造プラント(1バレル/日)を2024年9月に竣工するなど、GI基金に基づいた複数の実証事業や研究開発が進められている。
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