拡大する日本の最大電力需要 系統容量確保の実態と見直しの方向性第2回「次世代電力系統WG」(1/4 ページ)

データセンター投資や半導体工場の新設などの影響により、今後さらに拡大する見通しの最大電力需要。これに対処するための効率的な電力系統運用の確立に向け、「次世代電力系統ワーキンググループ」の第2回会合では、需要家側の系統接続に関する課題が議論された。

» 2025年03月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 近年、データセンター(DC)や半導体工場等の大規模な電力需要施設の建設計画が増加しており、2034年度における全国の最大需要電力は2024年度比で約4%の増加となる1億6459万kWと想定されている。

 一般送配電事業者に対して系統への接続供給申込みが行われ、かつ、未連系である特別高圧案件の容量は、2030年度までの累計で約1,500万kWに上り、これは現在の夏季最大電力需要の約1割に相当する規模である。

図1.最大需要電力(全国合計)の想定(夏季:送電端) 出典:電力・ガス基本政策小委員会

 DC等は一部エリアに局地的に立地する傾向にあり、需要家による系統接続申込みから連系までに長期間を要することが課題となっている。また、一部の需要家では、事業判断の前に一般送配電事業者に対して接続供給を申し込むことにより、実質的に系統の「空押さえ」が生じているケースもある。これは、真に電力が必要な事業者へ供給が遅れる原因となり得るほか、効率的な送配電設備の形成を妨げるおそれもある。

 このため、「次世代電力系統ワーキンググループ」の第2回会合では、需要家側の系統接続に関する課題が議論された。

データセンター等に対応する系統整備の事例

 東京電力パワーグリッド(東電PG)管内の千葉県印西・白井エリアでは、強固な地盤や都心へのアクセスの良さ等を背景に、データセンター(DC)等の立地が進み、電力需要が増加している。

 東電PGでは、こうした需要増加に対応するため超高圧変電所(千葉印西変電所)を整備するなど必要な対策工事を実施してきたが、すでにそれを上回る需要の接続申込みがあり、印西・白井エリアにおける連系待ちの大規模需要は約40件、申込容量総計は約2,500MWに上る。

表1.東電PG 印西・白井エリアの状況 出典:次世代電力系統WG

 DC等の連系に際しては、最寄りの変電所等から需要地までをつなぐ供給線のほか、印西・白井エリアでは変電所の新設や送電線張替といった上位系統の工事も必要となっており、工事費総額は2,000億円を超える見込みである。

 現行制度において、DC等を含む需要家が負担すべき工事費(特定負担)は、供給線に係る工事のみであり、その他の上位系統の工事費は一般負担(託送料金を通じて、エリア内のすべての需要家から薄く広く回収)となっている。

 また、供給線工事における工事費負担金(X円)は、以下のような計算式に基づき算出される。

 印西・白井エリアのケースでは、DC等の需要家が負担する金額(特定負担額)は総額約100億円程度である。なお、DC等の段階的増強計画の途中である等の理由により、実際に需要家に請求済みである金額はこの一部に留まり、その差額は、東電PGが一時的に負担するかたちとなっている。

図2.系統構成イメージ 出典:次世代電力系統WG
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