電力系統に接続する「系統用蓄電池」の早期連係に向けた暫定措置が2025年4月からスタートした。本稿ではその措置の概要と、系統接続および利用ルールの概要について解説する。
電力系統の増強は、電力の安定供給を大前提として、費用効率的・合理的に行う必要がある。FIT制度を契機として急増した再エネ電源の系統接続に対応するため、発電設備については2021年からノンファーム型接続が導入された。これにより、系統容量を超過(混雑)する場合には、出力抑制を前提として、系統増強工事を待つことなく、速やかに低コストで系統に接続することが可能となった。
ただし、需要設備については現時点このような仕組みがないため、安定供給確保の観点から最も過酷となる条件で潮流想定を行い、必要に応じて系統増強工事を行った上で、ファーム型接続が維持される。
つまり現在、発電(逆潮流)と需要(順調流)では、図1のように電力流通設備整備の考え方が異なっている。
電力系統に接続する「系統用蓄電池」は、放電(逆潮流)と充電(順潮流)の両面において流通設備を利用するため、2つのルールが同時に適用されることとなる。逆潮流については系統混雑に応じて放電抑制が行われるが、順潮流については蓄電設備の契約電力最大値が系統容量を上回る際には、系統増強工事を行うことが基本であり、その間、蓄電設備は系統への接続を待つ必要がある。
現在国は、順潮流側についても逆潮流側と同様の考え方を適用する制度について検討を進めているが、まずは足元の蓄電池連系にブレーキをかけないことを目的として、系統用蓄電池の早期連系のための「暫定措置」が適用開始された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.