従来の接続ルールでは、蓄電池は一般の需要設備と同じく、系統混雑を発生させないことを前提として、最大契約電力の受電が可能となるよう、順調流側の系統増強工事を行ってきた。ただし、蓄電池やその他一般需要を合計した電力の潮流は時間ごとに変化することが一般的であり、最も需要が多い時間帯以外では系統(順調流)に余裕があると考えられる。
電源におけるノンファーム型接続に倣い、蓄電池でも混雑時間帯の充電を制限することにより、系統の運用容量の超過を避け、既存の系統容量を有効活用することが可能となる。
よって一般送配電事業者各社は、充電条件を設定することによる蓄電池の早期連系暫定措置を、2025年4月から開始した。蓄電池設置事業者は、一般送配電事業者が設定する充電条件(平常時の充電を制限する時間帯・上限値等)に同意することで、混雑しない時間帯の容量を活用して接続することが可能となる。
充電条件設定による早期連系の適用系統は、逆潮流側のノンファーム型接続と同様に、基幹系統およびローカル系統を対象として、この適用電源および制御対象は、新規に接続を希望する高圧・特別高圧の系統用蓄電池である。系統充電する再エネ電源併設蓄電池も対象である。制御対象が膨大となり管理面での課題が生じる可能性があるため、当面、低圧は対象外である。
なお、「N-1充電停止」の適用が可能な系統は、まずはN-1充電停止の適用後に、充電条件設定による早期連系が適用される。つまり、一つの蓄電池の接続申込みにおいて、N-1充電停止と充電条件設定が同時に適用される場合がある。
この暫定措置に基づく系統接続を希望する蓄電池は、一般送配電事業者が指定する制限内容に基づく運転を可能とするための機能(スケジュール運転機能、通信途絶時のセーフティ機能等)を有した機器の設置が必要となる。この機器に関する一切の費用及び充電制限に伴う機会損失費用は、蓄電池設置事業者の負担となる。万一、当該セーフティ機器の機能不全等により、系統設備の損壊やこれに伴う停電等が生じた場合の復旧費用、損害賠償費用等も蓄電池設置事業者の負担となる。
充電条件の設定による暫定措置を希望する蓄電池設置事業者は、接続検討申込みの際にこの対策を希望する旨を伝え(図8)、充電時の受電電力等も申込書に記載する。
一般送配電事業者は接続検討結果を回答する際に、この対策の適用可否及び系統情報(制限内容を試算するための想定潮流に関するデータ)を提示する。また一般送配電事業者は、蓄電池設置事業者と運用に関する申合せを締結するまでに、具体的な制限内容(充電制限の時間・量)を提示する。充電制限時間の上限は、全国一律に「12時間」を目安としている。また、接続後に充電条件の見直しがある場合の更新頻度は、原則、年に1回である。
充電条件の設定による暫定措置を適用した蓄電池であっても、各種市場(スポット市場、時間前市場、容量市場、需給調整市場)のリクワイアメント達成は可能であるため、各種市場への参加に制限はなく、一般の系統用蓄電池と同様に取り扱われる。
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