本制度では、制度対象者の各年度の排出実績量は、エネルギー起源CO2及び非エネルギー起源CO2の直接排出量(実排出量)から、カーボン・クレジットの無効化量を控除して算定する(図6)。
現時点、本制度で利用可能なクレジットは、J-クレジットとJCMクレジットのみである。なおクレジットは、制度対象(直接排出10万トン以上であるか)の判定や、基準排出量・ベンチマーク水準を算定する際の排出量には、適用されない。
カーボン・クレジットは、中小企業など制度対象外の幅広い主体に対する排出削減の促進や、除去・吸収系の先行的な取り組みを制度上評価する観点から重要な仕組みである。ただし、クレジットの過度な利用は排出枠の需給バランスに影響を与え、適切な価格形成を妨げるおそれもあるため、諸外国の排出量取引制度でも、クレジットの使用可能量上限は5%〜10%程度に設定されている。
これらを踏まえ、本制度(第2フェーズ)では、各社のクレジットの使用上限を各年度の実排出量の10%として、今後必要に応じて上限の見直しを行うこととした。
なお現時点、J-クレジットの年間認証量は100〜150万トン程度(無効化・償却量は数十万トン程度)であり、JCMについては、Validation(有効化)段階を含む全132件のプロジェクトが創出可能なクレジット量は合計約986万トン(年平均約55万トン)、現時点の累計発行量は約78万トンに留まり、当面は本制度全体に占めるクレジットの利用量は限定的と考えられる。
排出量取引制度では排出量の大小が金銭的価値を持つことから、第三者による排出量の検証(確認)が重要となる。このため、本制度において対象事業者は、「1.排出枠割当の基礎となる排出目標量の届出」や「2.保有義務量確定の基礎となる排出実績量の報告」に当たって、「登録確認機関」による確認を受ける必要がある。
登録確認機関になろうとする者は、経済産業大臣に対して登録申請を行い、5年ごとに登録の更新が必要となる。登録確認機関の登録要件は、「確認業務を実施する基礎的資格」「業務従事者の能力」「経理的基礎」「品質管理体制の整備」の視点から整備することとする。また、登録確認機関が適切に業務を実施していることを確認するため、経済産業大臣は、登録確認機関に対して報告徴収等を実施することができる。
排出量取引制度を円滑に運用するためには、登録確認機関の「量と質」を十分に確保することが不可欠であるが、現時点、排出量検証に係るISO認定取得済み第三者機関は5社に留まる。
このため、まずは登録確認機関数の確保を優先的に取り組むため、制度開始後3年間の「体制構築集中期間」を設け、次のステップとして確認業務の品質向上に取り組み、登録確認機関制度の段階的発展を目指すこととした。
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