定置用蓄電システムは、主に系統用、再エネ発電所併設型、需要家側設置の3つのタイプに大別され、需要家側設置についても、家庭用と業務・産業用に分類される。
業務・産業ユーザーは、セグメントごとに電力の需要パターンや蓄電システムのユースケースが多様であり、蓄電システムの導入規模もさまざまであるため、ユーザー自身があらかじめ収益性を評価することが難しいという点が導入拡大の課題の一つとなっている。
このため検討会では、業務・産業用蓄電システムの代表的なユースケースを整理し、その収益性をセグメント別に定量的な評価・試算を行った。なお事務局では、節約等の金銭的メリットも含め、すべて収益と表現している。
検討会事務局では、蓄電システムによる価値を享受する主体として、需要家自身・小売電気事業者・一般送配電事業者を想定し、以下の7つのユースケースそれぞれにおける収益性評価の前提、収益の推計方法について整理を行った。
蓄電システムによる最も基本的な便益であり、ピークシフトにより契約電力(つまり基本料金)を下げる活用法である。蓄電システムを導入した需要家は、基本料金単価[円/kW/月] × ピーク削減量[kW] × 12[月/年]の計算式による金銭的メリットを得ることが可能となる。
太陽光発電の導入を前提として、昼間の余剰電力を蓄電システムに充電し、夜間等にこれを自家消費し、買電量(つまり従量料金)を低減する活用法である。(具体的な収益試算方法は図5を参照)
蓄電システムの導入により、需要家は一定時間、停電を回避することが可能となり、このようなレジリエンス向上価値を収益と見なす活用法である。レジリエンス価値は過去のアンケート調査を参考として1万円/kWhと仮定し、需要家メリットは、1万円/kWh/年×停電回避容量(kWh)の計算式により試算される。
太陽光発電の導入を前提として、昼間の余剰電力を蓄電システムに充電し、夜間等にこれを自家消費し、環境価値の向上(Scope2 CO2排出量の抑制)を収益とみなす活用法である。なお、再エネ価値は、J-クレジット(再エネ発電)の入札販売平均単価3,246円/t-CO2を用いて、CO2排出係数[t-CO2/kWh] ×余剰電力活用量[kWh/年] ×3,246円/t-CO2の計算式により試算される。
蓄電池を他のユースケースに使用していない日において、市場価格が低い時間帯に蓄電池を充電し、高い時間帯に放電することで、小売電気事業者の電力取引市場からの調達費用及び容量拠出金の負担を削減する活用法である。
蓄電池を容量市場に発動指令電源として入札し、その供給力に対する対価を得る活用法である。収益のうち、80%を需要家の報酬割合(残り20%はアグリゲーターの収益)と仮定する。収入単価は、2024年度のメインオークション約定実績より11,051円/kW/年で試算する。
蓄電池を他のユースケースに使用していない日において、需給調整市場に入札し、その調整力に対する対価を得る活用法である。応札価格を5円/ΔkW・hと想定する。
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