資源エネルギー庁の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」で、系統用蓄電池のサイバーセキュリティ対策の動向や、業務・産業用蓄電システムの収益性評価が報告された。
第7次エネルギー基本計画では、再エネの主力電源化にあたり、揚水発電や蓄電池などの調整力の確保を進めていくことが記された。また「GX2040ビジョン」では、2030年までの蓄電池国内製造基盤150GWh/年の確立に向けて投資促進策を講じることとしている。
国は、蓄電池メーカー等の事業の予見性を高めるため、定置用蓄電池の2030年導入見通しを公表しており、系統用蓄電池は累計14.1〜23.8GWh程度、家庭用、業務・産業用蓄電池は累計約24GWhとしている。ただし実際には、2025年3月末時点で約12GW(3時間率と仮定すると36GWh)の系統用蓄電池がすでに接続契約を行っており、国の見通しを大きく上回るペースで急速な導入が進んでいる。
現在、蓄電池については、安全性や持続可能性の確保、早期の系統接続、事業収益性の確保といったさまざまな課題が顕在化しており、資源エネルギー庁の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」では、蓄電池の着実な普及拡大に向けた対策の検討を進めている。
分散型電源の導入拡大やデジタル化の進展等に伴い、電力分野におけるサイバーセキュリティリスクが高まりつつある。系統用蓄電池システム(蓄電所)は一般的に図2のような設備で構成されており、BMS(バッテリーマネジメントシステム)、PCS、SC(サイトコントローラー)/EMS等が蓄電所サイトにおける制御・監視を司るシステムであり、それぞれ電池状態の監視・評価、充放電制御、出力配分最適化等の機能を有している。
通信機能を有するBMSやPCS、運用管理システムは、遠隔制御が可能であるため、悪意のある第三者(メーカー等を含む)が通信経由でBMS等のシステムに侵入し、データの改ざんや不正な制御が行われるリスクがある。
蓄電所に対してサイバー攻撃が行われた場合、蓄電所の運転停止または火災等の事故の発生により、蓄電所事業者自身や近隣住民等に影響が生じるほか、電力の安定供給を損ねる恐れもある。このような直接的/間接的な影響も踏まえ、社会的コスト最適化の観点から、関係者間でサイバー攻撃によるリスクのシェアと対応の在り方について検討することが求められる。
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