2026年度開始の排出量取引制度 「排出枠」算定に業種別ベンチマークを活用へ第1回「製造業ベンチマークWG」(2/4 ページ)

» 2025年07月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

ベンチマーク検討対象業種の選定

 本制度におけるベンチマーク検討対象業種の選定に際しては、業種ごとの排出量の規模、原料由来(非エネルギー起源)の排出の有無、事業者間の比較・分析可能性の観点から「1.石油精製業、2.高炉製鉄、3.電炉普通鋼、4.電炉特殊鋼、5.石油化学工業、6.カーボンブラック製造業、7.紙パルプ製造業、8.セメント製造業、9.石灰製造業、10.自動車製造業」の10業種を対象とすることとした。

 これにより、制度対象事業者の排出のうち、8割以上がベンチマークによる割当ての対象となると見込まれる。なお発電部門や、他の省庁が所管する業種については、別のWG等において検討が行われる予定である。

 また本制度では、EU等の排出量取引制度とは異なり、事業者単位での義務履行を求めている。大規模な事業者は、ベンチマーク(BM)対象となる業種とグランドファザリング(GF)方式により排出枠が割り当てられる業種・事業所等から構成されていることが一般的である。この場合、制度対象事業者全体の割当量は、当該事業者が保有する事業所ごとの各BM対象プロセス・GF対象の割当量を合算し、勘案事項による調整量を加えた量として算定される。

図2.事業者全体の排出枠割当量の算定例 出典:製造業ベンチマークWG

石油精製業のベンチマーク案

 石油精製業では、一つの精製プロセスから複数の製品(連産品)が同時に生産される。つまり、一つの製品のみを選択して生産することができない点が業種としての大きな特徴である。

 また、これまで国の政策として、原油1単位から精製されるガソリン等の得率を向上させるため、重質油分解装置の装備率向上等が義務付けてきたことなどにより、製油所ごとに装置構成が異なり、製品当たりのCO2排出量にも差が生じている。このため、製品単位のCO2排出量で製油所間のCO2排出効率を比較することは適切ではないため、石油精製業においては、石油精製プロセス全体を活動量として、製油所単位でベンチマークを策定することとした。

 プロセスバウンダリーとしては、製油所内における蒸留、脱硫、分解、改質等の石油精製工程及びそれらの工程に紐付くユーティリティ施設(ボイラー、タービン等)を含める案が示された。

図3.石油精製ベンチマークのバウンダリー 出典:製造業ベンチマークWG

 また、製油所で扱う原油や製品構成等の違いがCO2排出量に違いをもたらすため、民間の係数(日本版CWB係数)を用いて、製油所の装置構成・通油量等で標準的に排出されるCO2排出量を活動量とした排出原単位を算定する。

 2026年度開始の排出量取引制度において、削減義務が課されるものはCO2直接排出量であるが、製油所のCO2直接排出量は、外部からの購入電力・蒸気の有無により、差が生じることとなる。よって、公平性確保の観点から、ベンチマーク指標の分子は直接排出量と間接排出量の和とする。排出枠の割当量は、ベンチマークに事業者ごとの直接排出量の割合を乗じて決定する。

図4.石油精製所ベンチマークの計算例 出典:製造業ベンチマークWG

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