石油化学工業では、原料ナフサを分解する上流のナフサクラッカー(分解炉)において、エチレン等の複数の基礎化学品を連産品として製造するとともに、中下流の工程では基礎化学品の重合等により、有機化学品(樹脂やゴム等の原料となる誘導品等)を製造している。
石油化学製品の種類は非常に多く、原料となる連産品・副生品や各種燃料がパイプライン等を通じて複雑につながっているため、製品単位でのベンチマーク設定は困難と考えられる。
現時点、最上流のナフサクラッカーのみが共通設備として切り出しが可能であることを踏まえ、石油化学工業では、「1.ナフサクラッカー」「2.有機化学品」を製造する事業所の2つでベンチマークを設定することが提案された。
まずナフサクラッカーについては、生成する基礎化学品及び留分の生産量あたりの排出原単位をベンチマークとする。省エネ法ではC4留分・分解ガソリン等のうち代表的な製品の生産量のみを計上しているが、本制度では、対象設備から生産されるC4留分、C5留分、分解ガソリンのすべてを計上する。
ベンチマークの対象範囲は、基本的に省エネ法と整合させ、ナフサクラッカー及び基礎化学品製造に紐付くユーティリティ施設(ガスタービン等)を含める。ただし、事業所内の他プロセス(対象範囲外)に供給する熱・電気分(図6の②)は計上しない。
ナフサクラッカーのCO2直接排出量は、外部からの購入電力・蒸気の大小により、ばらつきが生じている実態を踏まえ、公平性確保の観点から、ベンチマーク指標の分子は直接排出量と間接排出量の和とする。排出枠の割当量は、ベンチマークに事業者ごとの直接排出量の割合を乗じて決定する。
有機化学品については、これを製造する事業所単位でベンチマークを設定する案としているが、有機化学品は製品構成が多種多様であり、その形状も固体、液体、気体と多様であるため、活動量(ベンチマーク指標の分母)として各種製品の生産量を適用するのは適切ではない。また有機化学品の品種によっては、製造プロセスに必要な熱・電力に大きな差があることや、非エネルギー起源のCO2排出量が多い製品があることも考慮する必要がある。
よって、有機化学品に共通で比較可能な活動量としては、「エネルギー使用量」を適用することとした。対象事業所は、日本標準産業分類における小分類「163有機化学工業製品(細分類1633 発酵工業を除く)」の製造を「主たる事業」としている事業所である。
ただし、同じ事業所内でナフサクラッカーやセメント製造など他のベンチマーク事業を行っている場合、バウンダリーの重複を避ける必要がある。よって、事業所内で行う事業のうち、他のベンチマーク(ナフサクラッカー等)が策定される事業をあらかじめ切り出した上で、残る製造プロセス(図7の赤枠内)を有機化学品のバウンダリーとする。
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