バリューチェーンの脱炭素化に向けた施策パッケージ、中間取りまとめが公表：「グリーン製品の需要創出等によるバリューチェーン全体の脱炭素化に向けた検討会」（3/4 ページ）

[梅田あおば，スマートジャパン]

施策B：バリューチェーン内企業間の連携推進

　社会全体での排出削減、つまりScope1,2,3排出量全体の削減に向けては、バリューチェーン内企業間の連携を一層高めていく必要がある。Scope1,2,3排出量の割合は業種により大きく異なり、消費者向け最終製品の業種ではScope3排出量の割合は高いと報告されている。

　2027年3月期以降、プライム市場上場企業を対象に、時価総額の大きな企業から順次、SSBJ（サステナビリティ基準委員会）基準に準拠して有価証券報告書を作成することが義務付けられる予定であり、これにはScope3排出量の開示も含まれる。

図8.業種別Scope1,2,3 （上流） の排出割合 （2019年）　出典：バリューチェーン脱炭素化検討会

施策B-ア：バリューチェーンでの連携に取り組む企業の顕彰

　規制による義務的措置に受け身で対応するのではなく、企業が自主的・積極的に連携して脱炭素化に取り組む事例を創出するため、バリューチェーンでの連携に取り組む企業を顕彰・表彰する仕組みを設けることとする。実際には、本施策は後述するサプライヤー・エンゲージメントと大きく関係すると考えられる。

　なお現在でも、温対法の算定報告公表制度（SHK制度）において対象事業者は、サプライチェーン排出量算定・削減の取り組みや、他者の排出量削減に貢献する取り組み及び削減貢献量を任意報告することが可能となっている。

施策B-イ：1次データの蓄積を促すデータベースの拡充の奨励・支援

　先述の「施策A-ア」では、国のデータベースにグリーン製品と1次データを登録することが想定されていたが、「施策B-イ」では業界団体等の民間が中心となり、1次データの算定・登録を行うデータベースを構築・運用することを想定している。

　標準的な2次データではなく、各社の削減努力を反映した1次データを用いて算定することにより、企業の削減努力が評価されるほか、個々の取引先とのデータのやり取りが省略・効率化されると期待される。

図9.1次データの蓄積を促すデータベースの拡充の奨励・支援　出典：バリューチェーン脱炭素化検討会

　すでに建築物の分野では、ライフサイクルカーボンの削減に向けた取り組みの一環として、建築資材の1次データの整備が進められている。