2026年度からの開始が予定されている排出量取引制度。その制度設計を検討する「排出量取引制度小委員会」の第2回会合では、ベンチマークやグランドファザリングにおける基準活動量・排出量の考え方、具体的な算定方法の詳細などが議論された。
2026年度から、CO2の直接排出量が10万トン以上の事業者を対象とした排出量取引制度の開始が予定されており、対象事業者は毎年度の排出実績と同量の「排出枠」を保有することが義務づけられている。
排出量取引制度において、排出枠とは他社と経済的に取引可能な財であるため、対象事業者に対してどのように排出枠を割り当てるかは非常に重要な論点となる。
本制度では、排出枠の割当は可能な限り、「ベンチマーク方式」を適用することとしており、ベンチマークの設定が困難な業種については、基準となる年度の排出量に一定の削減率を乗じる「グランドファザリング方式」を適用することとしている。
経済産業省の「排出量取引制度小委員会」の第2回会合では、ベンチマークやグランドファザリングにおける基準活動量・排出量の考え方や算定方法の詳細、事業所の新設・廃止、活動量の変動が生じた際の調整方法等について、検討が行われた。
排出枠の割り当てに際しては、まずはベンチマーク方式における「基準活動量」や、グランドファザリング方式における「基準排出量」を定める必要がある。ただし、企業の排出量や活動量は、自社の企業活動の結果だけでなく社会全体の経済活動の変動等の影響を受けるため、年度によって変動することが通常である。
このような変動の影響を和らげるため、基準活動量・排出量は複数年度の平均とすることが望ましいが、あまり長期とすることは企業の負担を増すことになり、事業所の新設・廃止等の変動要因を増やす一因ともなる。このため、EUや韓国の排出量取引制度では5カ年や3カ年の平均値/中央値を基準としている。
また、すでに日本では2023年度からGX-ETSの試行期間(第1フェーズ)が運用されており、多くの企業が2023〜2025年度の排出量の算定・検証を行っている。これらを踏まえ、GX-ETS第2フェーズでは、制度対象となる直前の3カ年度(2026年度から制度対象となる一般的なケースでは2023〜2025年度)を基準とすることとした。
このように基準活動量を一旦固定したうえで、目指すべき排出原単位の水準(ベンチマーク)を毎年度、段階的に引き下げていくことにより、ベンチマーク対象事業者に対しても、グランドファザリング同様に、排出削減に向けた着実な取組を促す仕組みとしている。
図2左の例では、2026年度から2030年度に向けて、目指すべき排出原単位(t-CO2/t)を直線的に引き下げていく案が示されている。このような段階的引き下げは、一種の激変緩和的な効果があると考えられる。経済産業省では、NDC(国が決定する貢献)の更新頻度も念頭に、5年程度先までベンチマーク水準を設定する予定としている。
なお、排出量取引制度小委員会の下に設置された「製造業ベンチマークワーキンググループ」では、業種ごとのベンチマーク案が検討されており、現時点、3つの業種(石油精製業、石油化学工業、紙パルプ製造業)におけるベンチマーク案が示されている。
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