「第2次洋上風力産業ビジョン」を策定 浮体式は2040年までに15GW以上を目標に「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」(1/4 ページ)

「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」が「洋上風力産業ビジョン(第2次)」を公評。昨今のエネルギー産業をめぐる情勢変化を受けた内容に刷新した他、浮体式洋上風力に関する新たな目標などを盛り込んだ。

» 2025年08月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラルに向け、大規模な脱炭素電源の一つとして、洋上風力発電の大量導入が求められている。また洋上風力発電は、事業規模が数千億円〜1兆円規模になり、構成する機器や部品点数が数万点に及び関連産業の裾野も広いことから、大きな経済波及効果が見込まれている。

 このため政府は、2020年12月に「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を策定し、再エネ海域利用法を通じた洋上風力の導入拡大と関連産業の競争力強化やインフラ環境整備等を、官民が一体となり進めてきた。第1次ビジョンでは、長期的な投資の予見性を高めるため、2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの案件形成目標が示されており、これまでに約6.1GWの案件が形成されてきた。

 しかしながら第1次ビジョンの策定後、ロシアによるウクライナ侵略等による燃料価格の高騰や世界的なインフレの進展、DXの進展による電力需要増加の見通しなど、エネルギーをめぐる状況は大きく変化してきた。

 このため、「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」は、

  • 世界的なインフレ等への対応・魅力的な国内市場の創出
  • 産業・技術基盤の充実
  • グローバル市場への展開

といった3つの取り組み指針のもと、新たな「洋上風力産業ビジョン(第2次)」を2025年8月に策定した。なお、今後の洋上風力発電拡大には浮体式の活用が不可欠であるため、第2次ビジョンには「浮体式洋上風力等に関する産業戦略」の副題が添えられている。

図1.洋上風力発電 着床式と浮体式の比較 出典:浮体式洋上風力発電の海上施工等に関する官民WG

浮体式洋上風力発電の新たな導入目標

 洋上風力発電産業の拡大を図る上で大前提となるものが、国内市場の創出である。また、国内に強靱なサプライチェーンを構築していくためには、国内外からの投資や優れた技術を呼び込む必要があり、事業者の投資判断のためには、安定的・継続的な市場規模の見通しや案件の大規模化が必要である。

 このため、第1次ビジョンにおいて政府は、浮体式も含め、「2040年までに30〜45GWの案件形成」との導入目標を掲げていたが、第2次ビジョンでは新たに、浮体式洋上風力発電に特化した案件形成目標を設定することとした。

政府の目標設定

  • 2040年までに15GW以上の浮体式洋上風力発電の案件を形成
  • 2029年度を目途に領海内における大規模浮体式洋上風力発電の案件を形成

 これまで再エネ海域利用法では、合計35の区域(促進区域、有望区域、準備区域)を指定してきたが、このうち11の区域では浮体式を計画しており、さらにグリーンイノベーション(GI)基金では、2つの海域で浮体式の実証を予定している。

図2.再エネ海域利用法に基づく区域指定の状況 出典:洋上風力促進WG

 なお、これまで再エネ海域利用法では、その適用対象を「領海及び内水」としていたが、2025年6月の改正法成立により、排他的経済水域(EEZ)においても長期間の洋上風力発電設備設置を認める制度が創設された。EEZも含めた日本の広大な洋上風力発電のポテンシャルを通じて、海外からの投資や優れた技術を呼び込み、浮体式洋上風力の国内産業競争力の強化や、新技術の導入によるコスト低減を図ることが必要である。

 また、これまで洋上風力案件形成の加速化のため、セントラル方式の一環として、2023年度からエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が設備の基本設計に必要な風況や地質構造の調査を実施してきたが、今後はEEZまで拡充することにより、EEZにおける案件形成の加速を図ることとした。

図3.セントラル方式に基づく案件形成・公募のイメージ 出典:洋上風力促進WG
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