現時点、国内には大型風車メーカーの製造拠点が存在しないが、日本は世界に冠たる造船技術や炭素繊維・鋼材等の素材技術、海洋土木工事等で培った調査・施工技術を保有している。今後、これらの技術をさらに発展させ、国内に洋上風力発電の強靱なサプライチェーンを構築することは、電力安定供給や産業競争力強化、地方創生の観点からも重要である。
このため第1次ビジョンにおいて産業界は、2040年までに国内調達比率を60%とする目標を掲げていた。第2次ビジョンではこれを65%に引き上げ、風車の主要製品であるナセルやブレードの国内製造拠点の形成を図る。また、導入拡大の前提となる施工・O&Mや、洋上風力産業を支え地方創生にもつながる人材の確保・育成に対する目標を設定することで、国内産業を強靭化する。
洋上風力産業拡大のためには、基地港湾等のインフラ整備も不可欠であり、港湾法に基づき、これまでに7港の基地港湾の指定・整備が進んでいる。これに加え、2025年4月に改正港湾法が成立し、今後の更なる案件の増加に備えた基地港湾の円滑な利用のための制度が創設された。
また、洋上風力発電施設の設置や維持管理には、重量物運搬等の使用目的や日本の海域特性に適した船舶が不可欠である。国土交通省では、年内にこれらの関係船舶の需要予測や、日本の海域特性に対応した船舶の性能等を取りまとめる予定としている。
国内の洋上風力発電事業者は、「浮体式洋上風力技術研究組合(略称:FLOWRA)」を設立し、浮体システムの最適な設計基準・規格化等の開発を進めている。FLOWRAでは風車の国産化に向け、2025年度内を目途に風車設計・製造の技術開発に貢献するエキスパート集団を組成する計画としている。
また海洋土木建設会社等は、「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(略称:FLOWCON)」を設立し、浮体式洋上風力発電の大量迅速な施工や合理的な建設コストの実現を目的とした研究開発を進めている。
また、洋上風力発電事業を支える人材確保・育成のため、産業界と教育・研究機関が連携して「洋上風力人材育成推進協議会(略称:ECOWIND)」を設立し、洋上風力に関する幅広い教育と理解醸成を進めていくこととした。
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