「第2次洋上風力産業ビジョン」を策定 浮体式は2040年までに15GW以上を目標に「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」(2/4 ページ)

» 2025年08月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

インフレ・サプライチェーン逼迫への対応

 再エネ主力電源化の実現を確実なものとするためには、引き続き、洋上風力発電事業のコスト低減・迅速性を図ることは重要である。

 ただし近年、世界的なインフレによる資材・エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)、金利上昇の影響を受け、洋上風力発電事業の開発コストが大幅に上昇しており、先行する欧米等では洋上風力発電事業の中断や撤退も発生している。また、国内でもこうしたインフレの影響を背景に、三菱商事が秋田県と千葉県の3海域で計画していた着床式洋上風力発電事業(第1ラウンド)から撤退すると発表している。

 よって、インフレに対して、事業実施の確実性を高めるための環境整備を一層進めるとともに、海外のサプライチェーンの逼迫に左右されないよう、国内産業の強化が求められる。

図4.物価変動率(2018年度基準) 出典:洋上風力促進WG

 洋上風力発電への電源投資は、大規模かつ総事業期間が長期間にわたるため、収入・費用の変動リスクに対応できる事業組成を促進することが、投資の確実性を高めていく上で重要である。これまでも、国民負担に中立的な形で、事業実施の確実性を高めるための規律強化・環境整備策として、保証金制度の見直しや価格調整スキームを導入してきたが、今後も公募の公平性を損なわないことを前提として、制度の在り方についてさらなる検討を行うこととする。

 また、第1次ビジョンで目標としていた着床式の発電コスト(2035年までに8〜9円/kWh)については、世界的なインフレ等を踏まえて早急に目標の見直しを行うとともに、浮体式についても、競争力のある強靱なサプライチェーンの構築に向けて、発電コスト目標の検討を開始する。

 現時点、洋上風力の採算性は、PPAによる需要家からの売電収入次第であると言える。よって政府は、脱炭素電源に対する需要喚起やPPA市場の活性化を行い、洋上風力の価値が適切に評価されるための環境整備を進める。

 なお現在、洋上風力による海域の占用期間は原則30年であり、その延長可否の予見性が低いことが、コスト低減の妨げとなることや、ファイナンスの障害となり得ることが課題として指摘されている。今後、電源投資に係る事業環境整備のため、対応策について検討を進める予定としている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
あなたにおすすめの記事PR