国土交通省が主催する「鉄道分野のGXに関する官民研究会」は、2040年を見据えた鉄道分野のGX推進に向けた目標設定や戦略について検討を行い、その基本方針を取りまとめた。
鉄道は、他の交通機関と比較して環境負荷の低い輸送手段であるが、国全体の約2%に相当する電力を消費し、列車運行用エネルギーに係るCO2排出量は、ディーゼル燃料由来も含め、約720万トン(2023年度)に上る。
「第7次エネルギー基本計画」では、鉄道分野において燃料電池鉄道車両の社会実装やバイオディーゼル燃料の導入に向けた取り組みを推進することが記されたほか、「GX2040ビジョン」では、鉄道分野の脱炭素化と競争力強化を進めるため、高効率化や次世代燃料を利用した車両・設備の導入に向けた支援制度の検討、モーダルシフトによる鉄道利用促進に係る取り組み、駅舎などの鉄道アセットを活用した再エネ導入の拡大など、鉄道ネットワーク全体の脱炭素化を推進することが記された。
また、国土交通省の「鉄道分野のカーボンニュートラルが目指すべき姿」取りまとめ(2023年5月)では、列車運行以外の駅等から排出されるCO2を含む鉄道分野全体の排出量で、2030年代に2013年度比で▲46%(▲540万トン)の削減目標を掲げている。
国土交通省では、「鉄道分野のGXに関する官民研究会」において、2040年を見据えた鉄道分野のGXに関する目標設定や戦略について検討を行い、2025年9月に「鉄道分野のGXに関する基本的考え方」を取りまとめた。
2021年度時点、国内鉄道ネットワークの64%が電化されており、「電車」の走行に伴うCO2排出量は704 万t(2019年度)と、鉄道事業全体の71%を占めている。
電化区間を走行する電車の省エネ化・高効率化を進めるためには、次世代パワー半導体や高効率同期モーター(高効率IM、PMSM、SynRM等)の採用、車体の軽量化が有効である。
また、列車の減速時にモーターを発電機として作動させること(回生ブレーキ)により発生する電力(回生電力)を架線に戻し、他列車の加速に活用することも広く行われているが、前後付近に他列車がいない場合は有効に活用できない課題もあった。
このため近年では、上下線をまたいだ回生電力の融通、蓄電池による一時的な貯蔵、回生インバータを介した駅施設での活用などの工夫が行われているほか、回生電力の絞り込みが発生しやすい区間では、き電(饋電)電圧を抑制し、回生率を向上させている事例もある。
これら車両自体の高効率化と回生率の向上により、最新の車両では初期のVVVF車両と比べ、約40%の省エネを実現しており、非VVVF 車両と比べると消費電力量は約3分の1に低下している。
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