鉄道分野のGX目標設定──官民研究会が2040年に向けた基本方針を公表「鉄道分野のGXに関する官民研究会」(3/4 ページ)

» 2025年09月25日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

再エネ電力の導入・活用に向けた目標

 鉄道事業者は、駅舎や車両基地、車両工場といった建物のほか、線路用敷地などを多く保有している。これらの鉄道アセットを活用した再エネ発電の設備容量は約5万kW、発電電力量は約5,000万kWhと報告されている(2022年度時点)。

 仮に全国の線路沿線に平均1m幅のペロブスカイト太陽電池を設置するならば、設置面積は2,800haとなり、年間発電電力量は20億kWhに上るとの試算もある。

 改正省エネ法では、保有車両数300両以上の特定輸送事業者(貨物1社、旅客26社)に対して、非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画の作成及び定期報告の提出を義務づけており、鉄道(電動車)は、2030年度の使用電力量の非化石電気比率「59%」を定量的目標の目安としている。

官民研究会では、主要鉄道事業者を対象として、再エネ電力の導入・活用に関する以下の目標を設定した。

  • 次世代型太陽電池の開発状況等も踏まえ、各鉄道事業者において2030年度までに鉄道アセットの活用を含む再エネの導入目標を設定し、省エネ法に基づく次期中長期計画等に反映する。
  • 主要鉄道事業者全体で、鉄道アセットを活用した再エネ発電の設備容量(約5万kW)を2035年度までの10年間で2倍以上に増やす。
  • オフサイトPPAや非化石証書等の活用を含め、2040年度において、主要鉄道事業者全体で使用電力の実質7割程度を非化石由来にすることを目指す。
図6.再エネの導入・活用目標 出典:鉄道分野GX官民研究会

非電化区間の車両の燃料転換・次世代化

 非電化区間を運行する内燃動車(ディーゼル車両)は約2,700両と鉄道車両全体の約5%であり、軽油の年間使用量は約185千kL、CO2排出量は約48万tである。

 既存路線の電化は困難であるため、車両単位での電動化や、水素やバイオ燃料への燃料転換を進める必要がある。図7左のハイブリッド車両は、電動車であるが、車載発電機の燃料に化石燃料を使用する場合、CO2を排出するという課題が残るため、早期の燃料転換が求められる。

 水素やバイオ燃料、合成燃料等の脱炭素燃料は、その供給インフラや価格面で課題が大きいことは、自動車や航空機・船舶と共通の課題であるため、他分野との連携が期待される。

図7.非電化区間の車両の次世代化 出典:鉄道分野GX官民研究会

 官民研究会では、主要鉄道事業者を対象として、非電化区間の GXに関する以下の目標を設定した。

  • 2030年度までに、水素車両の営業運転開始を目指す。営業車での走行実績を積み重ね、国際競争力を確保するとともに、並行して、幅広い線区で走行可能な水素車両の製作を進める。
  • 2030年度までに、バイオディーゼル燃料による営業運転開始を目指す。
  • 非電化区間における脱炭素化を強力に推進するため、2031年度以降に主要鉄道事業者が非電化区間に新規導入する車両は、ハイブリッド車両、蓄電池車両、水素車両を原則とする。トランジションでは、様々な選択肢を状況に応じて使い分ける。
  • 具体的な導入車種については、線区の条件、エネルギーの供給・コストの状況等を踏まえて鉄道事業者が判断するものとするが、2050年カーボンニュートラルを見据え、導入条件が整っている場合はゼロエミッションな蓄電池車両や水素車両を優先する。
  • 今後、電気式気動車やハイブリッド車両を導入する場合は、発電用エンジンを改造して水素等による発電システム等に換装できるようにする等、将来の更なる省CO2化への対応を予め考慮した設計とすることを検討するほか、可能な限りバイオディーゼル燃料の使用に努める。
図8.非電化区間の燃料転換等の目標 出典:鉄道分野GX官民研究会

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