国土交通省が主催する「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」は、このほど建築物のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量の削減に向けた制度設計の方向性について、中間とりまとめ案を公表した。
建築物のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス(GHG)の排出量は、日本のGHG排出量の約4割を占めると推定されており、建築物分野の脱炭素化は急務である。
これまで、「オペレーショナルカーボン」と呼ばれる建築物の使用段階のエネルギー消費に伴うGHG排出量の削減については、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)等による省エネ対策が進められ、今後も更なる削減が見込まれる。
他方、建築物GHG排出量の約1/4は、建築物の資材製造段階、施工段階、使用段階(フロン漏洩等)、解体段階で排出される「エンボディドカーボン」であり、建築物ライフサイクルの初期段階で発生する「アップフロントカーボン」の排出削減は、即効性のある脱炭素施策として特に重要と考えられている。
このため国は2025年4月に「建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた取組の推進に係る基本構想」を策定し、2028年度を目途に建築物LCAの実施を促す制度の開始を目指すこととしている。
これを踏まえ、国土交通省は「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」(建築物LCA制度検討会)を設置し、ライフサイクルCO2(LCCO2)に係る評価等を促進する制度について検討を行い、2025年9月に、建築物LCCO2の削減に向けたロードマップを策定し、その中間とりまとめを行った。
EUでは、2024年4月の建築物エネルギー指令改正により、2028年から1,000m2超の新築建築物、2030年から全ての新築建築物に対して、ライフサイクルGWP(Global Warming Potential)の算定及び開示を義務付けており、すでに欧州9か国ではエンボディドカーボン等の算定を義務付ける制度が導入されている。
国内では東京都が、2,000m2以上の新築建築物を対象とする「建築物環境計画書制度」に基づき、アップフロントカーボンの把握・削減の評価制度を2025年4月から施行している。
また、金融庁はプライム市場上場企業に対して、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示の一つとして、Scope3 GHG排出量の開示を義務付ける制度を開始し、時価総額3兆円以上企業については2027年3月期から、段階的にその対象を拡大していく予定としている。
不動産協会ではESG投資等の金融市場の要請に対応するため、「建設時GHG排出量算定マニュアル」を2023年に作成し、運用が開始された。
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