建築物のLCCO2削減に向けては、建築主、設計者、施工者、建材・設備製造事業者等の多様なステークホルダーの参画が必要となるため、まず国は、各主体が取り組むべき事項について、指針を示すこととした。
建築物LCAが一般的に実施されることにより、建築生産者(建築主・設計者・施工者)や建材製造等事業者の脱炭素化の取組を導く好循環が生み出される社会を目指すとしている。
例えば、建材・設備製造事業者は、省エネ・非化石エネルギー転換による脱炭素化された建材・設備の開発・製造を進めるとともに、CO2等排出量原単位を整備し公開することにより、建築生産者による選択を可能とする。
一般的に、エンボディドカーボン、特にアップフロントカーボンと建築物躯体の資材使用量の相関性は高く、建築物の耐震性を高めることとエンボディドカーボンの削減はトレードオフの関係にある。よって、地震や台風等の自然災害の多い日本の実態を踏まえた制度設計が求められる。
また、建築物の断熱性を高めるなどの取組は、建築物資材のGHG排出量を増やす場合があるなど、オペレーショナルカーボンとエンボディドカーボンの間にも、トレードオフの問題が存在する。
また、省エネによるオペレーショナルカーボンの削減は、建築物ユーザーに光熱費の削減という経済的便益をもたらすのに対して、低炭素資材への転換によるアップフロントカーボンの削減は、ユーザーに直接的なメリットをもたらさないという大きな違いがある。このため、適切な規制の導入やインセンティブ措置が無い場合、LCCO2の評価・削減は、環境意識の高い一部の事業者のみの取組みに留まるおそれがある。
個々の建築物におけるLCCO2評価や、その算定に必要となる建材・設備のCO2等排出量原単位の整備において、一足飛びに厳密かつ精緻なものを追求する場合、社会的コストが過大となり、普及が進まないことも懸念される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10