また国は、建築物の省エネ性能・脱炭素性能として特に重要となる情報について表示する際の建築物のLCCO2評価結果に係る表示ルールの策定や、第三者機関によるLCCO2の評価・表示制度の創設に向けた検討を行う。
表示事項または第三者評価書における記載事項としては、以下のものが想定される。
「ゼロカーボンビル推進会議」により開発された「建築物ホールライフカーボン算定ツール(J-CAT)」における建築物LCCO2の算定方法及び表示事項は、図6の通りである。
建築物のLCCO2算定・評価にあたっては、建築物で使用される建材・設備について、それぞれ製品カテゴリー別のCO2等排出量原単位が必要となる。
日本建築学会が産業連関表ベースで構築したLCAデータベース(統計データ)の原単位がすでに存在するが、統計データでは、個々の建材・設備製造事業者における製造時の脱炭素化等の取組みが評価できない等の課題がある。建材・設備製造事業者における企業努力を適切に評価し、更なる脱炭素化を促す観点からは、CFPやEPD(製品環境宣言)といったいわゆる積み上げ型の原単位の整備・活用が必要である。
膨大に存在する建材・設備のうち、特に建築物LCCO2全体に占める割合の大きい主要建材を優先し、鉄鋼材料、コンクリート、木材については、2027年度までに主たる5製品カテゴリーのCO2等排出量原単位の整備を完了させることとする。また、様々な建築物において共通して使用される頻度が高いアルミサッシ、ガラス、OAフロア、石こうボードについても、2027年度までに可能な範囲で主たる製品カテゴリーのCO2等排出量原単位の整備を完成させるものとする。
建築物LCCO2算定・評価のための建材設備CO2等排出量データ整備に際しては、データ利用側(建築主・設計者・施工者)の使いやすさとともに、データ整備側(建材製造等事業者)の取り組みやすさへの考慮が重要である。
よって、本制度開始後の過渡期の措置として、第三者検証なしのCFPなど、簡易な方法によるデータの整備も許容する。
一般的に、基本設計等の建築工程初期段階では、具体的な建材・設備等は未定であるなど、建築物の設計・施工の各工程により、LCCO2算定に使用可能なデータ(CO2等排出量原単位)は異なるほか、CO2等排出量削減のための工夫の余地も異なる。また、LCCO2評価実施のタイミングに応じて、算定結果の活用先も異なることが想定される。一つの建築プロジェクトにおいても、複数の段階でLCCO2を算定することが想定されるため、事業者負担への配慮が求められる。
現時点、建築物のLCCO2評価を実施できる人材・体制は十分でないため、2028年度の制度開始に向けて、産学官が連携し、LCCO2評価・設計等にかかる専門家の育成や、LCCO2算定結果の評価を行う第三者評価機関の整備が求められる。
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