改正省エネ法が影響、“エネルギーの定義変更”で建築物省エネ法はどう変わる?太陽光の自家消費の取り扱いにも影響(1/5 ページ)

2023年4月から施行される改正省エネ法では、従来の「エネルギー」の定義が見直された。この改正は、建築物省エネ法におけるエネルギー消費量の算定基準などにも大きく影響しそうだ。改正省エネ法の施行を受けた、建築物省エネ法における今後の基準値の見直しの方向性などについてまとめた。

» 2023年02月24日 12時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル実現に向けて、住宅や建築物においてさらなる省エネが求められている。

 このため国は、「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」を改正し、2025年度以降に新築される原則全ての住宅・建築物は、省エネ基準への適合が義務付けられることとなった。

 例えば、東京などが含まれる「6地域(建築物省エネ法における地域区分)」の場合、現行省エネ基準の断熱性能を確保するためには、壁や床に一定の厚さの断熱材を設置するとともに、開口部に複層ガラスを採用する等が必要となる。

図1.省エネ基準に適合する住宅の仕様例(6地域・東京など) 出所:国土交通省

 しかしながら、住宅や建築物において求められる省エネ基準とは、図1でイメージするような断熱材や複層ガラス等による「外皮基準」だけでなく、空調等によるエネルギー消費量の基準も満たす必要がある。

 これまで「省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」におけるエネルギーの定義を引用してきたが、省エネ法の改正により、「エネルギー」の定義も変更されることとなった。

住宅における外皮性能

 住宅の外皮性能は、UA値とηAC値により構成され、いずれも地域区分別に規定されている基準値以下となることが必要とされる。

 UA値(外皮平均熱貫流率)とは、室内と外気の熱の出入りのしやすさを表す指標であり、 建物内外温度差を1度としたときに、建物内部から外界へ逃げる単位時間あたりの熱量を、外皮面積で除したものである

 つまり、UA値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高いと言える。地域区分別の現行UA基準値は表1のとおりである。

表1.地域区分別のUA基準値 出所:国土交通省

 またηAC値(イータ・エーシー:冷房期の平均日射熱取得率)とは、太陽日射の室内への入りやすさを表す指標であり、単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で除したものである。

 つまり、ηAC値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高いと言える。なお、これらの外皮基準は住宅のみに適用される。

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