改正省エネ法が影響、“エネルギーの定義変更”で建築物省エネ法はどう変わる?太陽光の自家消費の取り扱いにも影響(3/5 ページ)

» 2023年02月24日 12時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

電気の一次エネルギー換算係数

 住宅・建築物で使用する空調や給湯設備において、エネルギーは電気や熱のかたちで消費されているため、これを共通の熱量(MJ)に換算することにより、合計エネルギー消費量を算出することが可能となる。

 ここで電気(kWh)を熱量(MJ)に換算するための係数が必要となるが、建築物省エネ法では、電気は二次エネルギーの熱量(消費した電気そのもの)ではなく、一次エネルギー(発電・送電ロスも考慮した、当該電気を作るために発電所において投入されたエネルギー)に換算した熱量により算出している。

図3.電気の一次エネルギー換算係数のイメージ 出所:建築物エネルギー消費性能基準等小委員会

 これが電気の一次エネルギー換算係数であり、当該換算係数は、省エネ法と整合的に国土交通大臣告示によって規定している。

改正省エネ法 電気の一次エネルギー換算係数

 現行省エネ法においては、系統電気は当該電気の起源を物理的に特定できないため、全量が化石燃料により発電されたとみなして、電気の一次エネルギー換算係数は火力平均の9.76MJ/kWhとされている。これは2003年実績を基に2006年に改正された係数であり、それ以降変更されていなかった(※例えば、足元2018年度〜2020年度平均値は9.40MJ/kWh)。

 再エネ等の非化石電源の増加により、現実との乖離が大きくなることが懸念されるため、改正省エネ法では、全電源平均係数で算定することに変更された。具体的には、直近3年間(2018年度〜2020年度)の平均値8.64MJ/kWhを用いることとして、これは従来と比べ約11%小さい係数となる。

 今後は、エネルギーミックスの進捗を踏まえて係数を見直すこととしている。

図4.全電源平均係数の試算 出所:省エネ小委工場等判断基準WG

 また従来の省エネ法における「エネルギー」とは、「化石由来」の「燃料、熱、電気」を指していたが、改正省エネ法では再エネも「エネルギー」の定義に含め、使用の合理化(=省エネ)の対象とされた。

 なお改正省エネ法では、自家発太陽光発電電気については、電気そのもののエネルギー量(3.60MJ/kWh)で換算することとしている。

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