費用データの入手が可能な2023年度時点の業務・産業用蓄電池の導入費用は、工事費込みで10.6万円/kWhであり、このCAPEXを前提とする場合、通常は経済性が得られないことが業務・産業用蓄電池の導入が進まない要因となっている。
「第6次」エネルギー基本計画では、業務・産業用蓄電池の2030年度目標価格を6万円/kWh(工事費込み)としていることから、三菱総研ではこの実現を前提とした収益性評価を行った。なお、投資意思決定の一般的な基準であるIRR 10%以上となる場合に、蓄電池(運用期間20年間)導入の経済性ありと判断している。
蓄電池の導入により、ピークシフトによる設置者(需要家)自身の基本料金削減が可能となるなど、さまざまな経済的価値が得られるが、このようなユースケースの組合せで想定されるマルチユースのパターンとして以下の6つが想定された。
図4の通り、ユースケースのうち、ピークシフト(基本料金削減)による経済的効果が最も大きい点はいずれのパターンも共通であるが、ユースケースを積み重ねることにより、収益が2倍程度大きくなるパターンもある。また負荷率の違いにより、ピークシフト効果の大小が異なるため、低負荷率グループの収益性が高いことが確認された。
低負荷率グループの場合、IRRが10%以上となる需要家は、パターン2〜6のいずれも半数以上(パターン3や5では9割)となるという分析結果となった。なおこの分析では停電補償(BCP)の価値を一定の単価(1.0万円/kWh)と仮定しているが、実際には需要家ごとにその価値は異なり、採算性の得やすさも異なると考えられる。
業務・産業用蓄電池の普及拡大に向けては、蓄電システムの標準化等によりCAPEXの低減を進めるとともに、アグリゲーターを通じた容量市場や需給調整市場への参加等による収入源の複数化が期待される。ただし、2025年度容量市場メインオークション(対象実需給年度:2029年度)では、発動指令電源の応札容量が応札上限容量を超過した(一部は非落札となった)ことに留意が必要である。
近年、国内外で蓄電池システムの事故が発生しており、今後の蓄電池システムの増加に伴い、事故件数の増加も懸念される。
このため経済産業省は、「電気設備の技術基準の解釈(20130215保局第4号)」を改正し、JIS C 8715-2(2024)を引用することで、電気事業法上の技術基準を明確化した(2025年11月施行)。また系統用蓄電池や、発電所に併設される電力貯蔵装置等を、電気事業法上の事故報告の対象に追加した(2025年11月施行)。
さらに、これまで国内では、非常時・災害時等の蓄電池システムの安全性に関する基準は存在しなかったが、製品評価技術基盤機構(NITE)では、特に行政サービスや情報通信、電力等の重要インフラの機能維持や早期復旧に資する蓄電池システムの普及を目的として、2025年12月に「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の暫定版を公表した。2026年5月頃には、試験方法や判断基準を含む別紙を加えた確定版の公表が予定されている。
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