コラム
» 2007年03月19日 12時16分 UPDATE

金融・経済コラム:ホリエモン待望論

先週、堀江前社長に実刑判決が言い渡されました。彼のいなかった14カ月間の日本のインターネット業界を見ると、閉塞感が漂っているように思えます。彼にこの間のIT・ネット業界の発展度合いについて聞いてみたい気がします。

[保田隆明,ITmedia]

 ライブドアの堀江前社長への判決が先週言い渡されました。2年6カ月の実刑判決。執行猶予はつきませんでした。有罪になることはある程度想定されていたとはいえ、執行猶予ナシの実刑判決には重すぎるのではないかという声も上がっています。

 判決の妥当性、刑の重さなどに関しては法律の専門家に委ねたいと思いますが、もし今後の控訴を経てもこのまま実刑確定ということになれば、ホリエモンはしばらくは社会活動、経済活動ができなくなります。

 ライブドア事件で東京地検によるライブドア本社の家宅捜索から14カ月が経過しました。その間、ホリエモンのみならずライブドア関係者はまともなインターネット事業が行えていません。ライブドアにいたっては、均衡縮小の道を模索し、同社のサイト上では次々とサービス終了、サイト閉鎖のお知らせが並んでいます。

 ライブドアがまっとうなインターネット企業であったか、あるいは虚業であったかという点に関してはエンドレスな議論がありますが、同社の有している(もしくは有していた)インターネットサービスを鑑みるに、収益を上げていたかどうかは別として、同社が日本有数のインターネット事業を行っていたことは否定できないかと思います。そういう企業、そして経営者がこの14カ月間実質的に機能していなかったというのは、日本のインターネット事業の発展という観点からはロスということになります。

 どの産業にも栄枯盛衰が存在し、衰えていく産業があれば、これから発展し成長していく産業も存在します。IT・インターネット産業はまだまだこれから発展していく産業であることを否定する人はいないと思います。一方、日本のエスタブリッシュ層の中ではまだその業界を1つの業界として認めない人達も多く存在します。

 非常に粗いシミュレーションではありますが、今回のライブドア事件による堀江前社長を、例えば日本の高度成長期初期における本田技研の本田宗一郎氏、ソニーの盛田昭夫氏や井深大氏などに置き換えて想像してみるに、もし、当時彼らが同様の粉飾決算を働いていたとして、その判決に執行猶予はついたでしょうか。今後の日本の経済成長を考えるに必要不可欠な企業と人材という判断で、せめて執行猶予はついたのかなと勝手に想像します。もちろんこれは法律的判断を別にしたものですが、ただ、どの判決もピュアに法的解釈のみによって行われるものではなく、民意や裁判官の心情などが大きく左右するであろうことは抗えないと思いますので。

 これは別にホリエモンがそれら偉大なる日本の起業家達、経営者たちと同レベルで偉大だと言いたいわけではなく、単純に日本の今後の経済成長に不可欠な産業、企業、人物であると思われる場合は、早期の更生を願い、国力向上への貢献を持って罪を償うという発想もあるのかなと思ったりしたのでした。

 技術立国日本ですが、実際のその姿はこの20年ほどは世界を席巻するような発明があまり存在しないという有様です。そういえば、偉大なるVHSの発明をしたビクターもとうとう自主再建の道が立たれ、どうやらファンドに売却される様相です。一方、アメリカではMicrosoft、Googleなど様々な新興企業が世界中の人達の生活を激変させるような発明を行っています。

 カネボウ、山一證券など、過去に粉飾決算を行って有罪となった企業経営者はたくさんいましたが、みんな執行猶予がついていたそうです。それら経営者はもう人生の折り返し地点はとっくにすぎていて、後はいかに残された余生を楽しむかという年齢に達していました。日本の産業発展に貢献できる年数という意味では決して長くはなかったでしょう。

 一方のホリエモン。彼はまだ30代半ばです。今後彼の能力、才能を活かせば、まだ日本のインターネット産業の発展の余地は多くあると思われます。

 ライブドア事件以降の14カ月間の日本のインターネット業界を俯瞰してみるに、Web2.0狂想曲が流れていただけで、実質的にはあまり大きな発展はありません。むしろどの企業でもライブドア事件以降の後遺症にさいなまれているというありさまです。今や時価総額ではインターネット企業の最大手となっている楽天にしても、先日の決算発表での会見を聞く限りは、今後の成長は海外での事業拡大に求めるという状況で、どうやら日本のインターネット業界の発展という意味では閉塞感が漂っています。

 国、経済の閉塞感を打破する、そして既得権益、規制と争い1つ1つ打ち破っていくのがホリエモン流でした。今の閉塞感漂うインターネット業界の状況、そして、同業界が今後の日本経済の発展に寄与することは間違いないだろうことを鑑みるに(エスタブリッシュ層はそうは思っていないと思いますが)、今回、ホリエモンに対して執行猶予がつかなかったことは、マクロ的に見るともったいないのかもしれないと思ったりしました。

 この週末、ホリエモンがテレビ出演をしていましたが、質疑応答は主に判決内容に関してでした。私が質問をできる立場であれば、この14カ月間、もしライブドア事件が起こらずライブドアという企業を経営し続けていたのであれば、どういうインターネットサービスを提供していたのか、また、今すぐに経営に復帰できるのであれば、どういうサービスをしたいか、また、この14カ月間のインターネット業界の発展度合いを見て、何を思うかなどについて聞いてみたいなと思いました。

 ただ、ホリエモンは球団買収、衆院選選挙立候補、宇宙事業など、インターネット以外の分野に対しての興味が高まっていたようですので、今更インターネット業界に対しての熱い想いはホリエモンの中には存在しないのかもしれません。それであれば、ホリエモンに執行猶予がつこうがつくまいが、あまり関係ないということになりますし、いくら過去の粉飾決算を行った経営陣に執行猶予がついていたとしても、当時と今では株式市場、企業の内部統制、コーポレートガバナンスに対する考えも大きく変わっており、今ではむしろ厳しく対応していくことが望まれていますので、その意味では実刑判決というのは、今後の日本企業の経営環境、株式市場のあり方を正す意味では時代の趨勢的にはアリなんだと思います。

 ただ、個人的には、今の閉塞感漂うインターネット業界において、再びホリエモンのような存在が欲しいなと思ったりします。停滞が続く新興市場ですが、またしばらくはこの流れ続いてしまいますかね……

保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0〜正直マーケティングのすすめ〜』(共著:明日香出版社)、『M&A時代 企業価値のホントの考え方』(共著:ダイヤモンド社)『なぜ株式投資はもうからないのか』(ソフトバンク新書)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

マーケット解説

- PR -